煙
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すよ?」
ラウンジの中央。
そこには丸く、縦に長い筒状のガラスケースが二つ置かれていた。Jはそのひとつに優しく触れる。
『そのようだな。だが、Rは我が『組織』において欠かせない手駒だ。死なせるわけにはいかない』
「はい。Rを死なせることはありえません」
――ケースの中には、一人の吸血鬼と一人の人間が別々に収められていた。
『吸血鬼の持つ果てない命――Rがいれば『組織』は永遠に続く』
Aは歌うように言葉を続ける。
『Rに吸われたNも同様だ。と共に果てない命を得る』
「そうなれば《主人》様の夢と願いは現実のものになる
――」
Jも、流れるように言葉を紡ぐ。
その目に何が見えているのだろうか。
『良いか。我々『組織』の願いは《主人》様の願いそのものだ』
Aの声に、力が入った。
「承知しております。――そろそろ『実験』に入ってもよろしいでしょうか?」
『わたしが許可をしよう。《主人》様には後でお伝えしておく』
「ありがたき幸せ。では……二十四時より開始いたします」
『失敗はするな。二人を殺すな。お前も死ぬな。――それだけ守れ』
「仰せのままに」
ピッ、と電話を切るJ。
目の前のケースに入ったNとRを一瞥して、Jは小さく言った。
「R……大切な人間から血を奪うことがどれだけ辛いかは分からない。だが、これは《主人》様、それに『組織』のためだ。同僚にこんなことをするのは良心が痛むが……せいぜい泣きながら吸ってくれ」
そうしている間も時間は刻一刻とせまり、ラウンジの時計とJのスマートフォンの時計機能が二十四時を示す。
「――さあ、楽しい吸血(ショー)の(タ)時間(イム)の始まりだ」
J……JOKERの声が、ラウンジに響いて消えた。
(終)
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