大食いと憤怒と渇望
頭痛の種
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生徒会長を見る目は、どう見方を変えようと愛玩動物を愛でるそれであり、加えて彼の右隣にいる登校時にも後ろ姿を目に入れた生徒は、まるで美の化身かはたまた女神かを見たと言わんばかりの表情。
眼を閉じたのは単に聞き流す為だけでは無く、彼等を目に入れないという目的もあった様だ。
小学生と同等しか無い身長を持つ生徒会長だが、生徒の上に立ち導く存在としてのカリスマ的気迫があるのを、彼もしかと感じた。
……なのにそんな彼女を見て、背伸びをする幼女を見るかの如き慈愛の色を込めた視線を向け、しかも全くの初対面で且つ入学と言う真面目な場面であるこの場所で、隠す事も無く寧ろさらけ出さんばかりの勢いで、ホッコリしていたりだらしなくニヤケる一歩手前の表情をするなど、ちょっと先輩に対して失礼ではなかろうか。
尤も、周りがそんな奴らだらけだからと言って、初っ端から睡眠を取ろうとするやつもどうかとは思うが……。
生徒会長の演説も恙無く終わり閉会の言葉が告げられ、入学生は担任と思わしき人物に案内されて体育館を出る。
途中準備があるのか担任が居なくなったのを皮切りに、生徒達は入学式の感想を言い合い始めた。
……ちなみに、殆どが会長の事であり、部活動パフォーマンスを話題に上げようと、自然さと言う言葉が欠片も感じられない、説得どころかもはや新宗教勧誘の如き強引な言葉で振り出しに戻される。
そんなざわめく生徒達の中で、彼はまだ眠そうにしながら眼を時折痙攣させていた。眉がひそめられているのを見るに周りの生徒達の話の内容が煩わしいというのもあるかもしれないが、大部分は寝不足がしめるであろう。
教室に入り指定された席に座った途端、彼は開きかけていた目を再び細める。
(……よりにもよってこいつか……)
何故ならば、彼の隣は体育館で生徒会長を信望を通り越して信仰の目で見ていた、通学路でも見かけた男子生徒だったからだ。
余計な話を此方に掛けて来ないだろうなと、彼は入学早々頭が痛くなる。
生徒会長が如何だのと言われた所で、彼にとって生徒会長という存在は文字通りの意味しか無く、見目形が麗しかろうと醜かろうと、極論どうであろうとも正直如何でもよく、話が少しでも飛躍すればその時点で着いて行けなくなるからだ。
幸い彼は未だ生徒会長の姿を思い浮かべているのか(それはそれで奇行だが)何処か上の空であり、担任がドアを開けて入って来るまで、魂が抜けた様な格好のままで彼には何の話も振らなかった。……尤も、だからと言って彼の悩みの種は減らずむしろ増えたが。
「え〜と……皆さんご入学おめでとうございま〜す、このクラスを受け持つ樽井 ことりです〜……よろしくね」
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