大食いと憤怒と渇望
頭痛の種
[1/5]
前書き [1]次 最後 [2]次話
私立陽月学園。
初等部から大学部まで一貫して進学が可能な、所謂エスカレーター式の学園で、落ちぬ為にとに必死になっている受験生の皆さまには悪いが、進学した者にとってすれば当たり前な為にそこまで喜べるものではない。
それは朝日に照らされる通学路を、明らかに学園指定の鞄では無いナップサックを片手で掛ける様に持ち、染めるのに失敗したらしい汚い色のメッシュを入れた髪を持つ、手入れをしていないのか髪が所々痛んでいる背の高い少年も同様だった。
手を添えてガキリゴキリと首を鳴らし、欠伸を遠慮一切なくかましながら、車の通らない道の真ん中を歩いて行く。その表情には、今日から高校生だという感慨深さも感じられなければ、緊張しているといった雰囲気もうかがえない。
寧ろ、学校に通う事を退屈に思っているかのようだ。
(……入学式が終わったら、さっさと帰るか……?)
少し前に居た彼よりは髪の長い少年と、彼の幼馴染か彼女かであろう髪を左右で二つに結んでたらした少女の横を、彼は速足で抜けて行った。
校門を抜けて、中学時代よりも規模が大きい校舎と体育館を見た時は流石に驚いたようだが、すぐにどうでもよくなったかさっさと体育館へ足を進めていく。
やがて始まった入学式だったが彼は、教員達の訓辞や歓迎の台詞を耳からシャットアウトして完全に無視し、何とも失礼な事に半ば寝かけていた。憶測だが、彼がこの陽月学園を選んだ理由は進学の際に楽が出来るからではなかろうか。
次に行われる各部活動のパフォーマンスも彼はどこ吹く風で、眼はおろか耳に入れているかも怪しい。折角新入生を歓迎する為に内容をこの日まで必死に練り、一分弱と言う限られた時間で部活動の良さを最大限伝えられるようにと体を張っているのに、それを後の事一切合切考慮せずに無視とは身勝手にも程がある。
まあ、部活動に入る入らないは個人の自由、強制できる事では無い。しかし、情熱を持って打ち込もとしている人が今彼を見れば、不機嫌になること間違いなしだ。
いやに長く感じるオリエンテーションは終了し、続いて生徒会長と思わしき人物が壇上に上がるのを見て、まだ完ぺきに寝てはいなかった彼は半開きの目を細めた。
(ガキか……)
彼が思ったが通り、生徒会長は背がかなり低い女子生徒であり、その低さたるや『私は小学生何です!』と言われても余裕で信じられるレベルだった。
名家の出なのかそれとなく厳かな雰囲気を纏い、小さい体に似合わぬ“力”を持って、静かに演説を始める。
……が、彼は顔を左右に少しずらした後、これすらも聞き流すべくとしたか、眼を閉じて腕組みをした。
しかしながらよくよく見ると、周りの生徒達が
前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ