暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
1部 Aincrad:activation
序章
はじまり
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の一である。ベータテスターには初期生産在庫の中から割り当てられたテスト用のキットが無料で支給され、気前の良いことにキットはそのまま無償提供されることとなった。このサーバーで現在SAOにログインしているプレイヤーは単純に考えると最大で一万人。そのうちの十人に一人の割合のレアものを見ていることになる。特に感慨深いものはないのだが、割合的に珍しい部類に入る事象なのかもしれない。


「お話とかしないの?」
「話す理由がない」


 同じベータテスターだからといって積もる話があるということは決してない。殊に俺に至っては碌にPTも組まず単独で行動していたために知り合いと呼べる相手もいないのである。興味もない相手に無理に会話しに出向くほど無駄な真似はしたくないし、苦手だ。何より楽しんでいる最中に水を差すのも申し訳ない。


「そっか。じゃあ、続き始める?」
「いや、もう夕方だから一旦落ちる」
「落ちる? えっと、ここから?」


 残念ながら、崖から飛び降りてログアウトするという斬新なゲームを俺は知らない。


「………一旦、現実の部屋に戻る」


 このやりとり一つで先が思いやられる。せっかくの一時をお守で潰されるのは鼻持ちならないが、こいつと仲良くなってくれるような聖人君子様が現れればすぐに押し付け……いや、PT(パーティ)を組んで励んでもらいたい所存だ。
 そして時計の時間は午後五時二十五分。すっかり拘束されてしまっていたようである。見たい番組と夕飯を考えれば、口惜しいがキリの良いタイミングだと思う。


「んー、私もお風呂入ってからもう一回戻ってこようかな?」
「風呂早っ」
「だってすごい列だったからねー。立ちっぱなしで汗かいちゃったんだから。じゃあ、またあとで………あれ?」


 メニューを覗き込んだまま、ヒヨリは首を傾げる。
 ログアウトのボタンが分からないのか何度か上下にスライドさせたかと思いきや、挙句の果てには裏側を覗きだした。ボケでやったのなら百点満点なのだが、他人の視線があれば知り合いと思われたくないと思うほど間の抜けた姿勢である。


「どうした? ログアウトはメインメニューの一番下だろ?」
「燐ちゃんどうしよう………ログアウト、ないの………」


 そんな落し物でもあるまいし、と軽くぼやきながらメニューを開きなおす。ベータテスト中ですっかり慣れたウインドウ、間違えるはずもない。


「ほら、これ……だ、ろ………?」


 感覚に染みついた動作のみでログアウトボタンをタップしようとするも、確かにログアウトボタンはない。いや、正確にはログアウトボタンの部分が空白になってしまっていたといった方がしっくりくる。ベータテストでは確認されなかったバグだ。GMコールも一切
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