第1話 降り立つ、客人
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なかったら、いつまでも基地を固められずに、死者も出ていたかも。日石の方々の技術のおかげで助かりました。」
「ま、私らも必死の思いでしたから!あの枯れた列島からもガスを搾り出した、私らの大和魂を見せてやりましたよ!」
自分よりずっと年上の尾上がニカっと笑い、胸を張るのを見て、仲嶋は「元気だなあ…」と思った。自分のような軍人と違い、民間人である尾上ら日石の社員は、それこそ会社に入った時はこんな物騒な土地で仕事をする羽目になるとは思いもよらなかっただろう。にも関わらず、今も元気に仕事に励み、不安だったあの頃を笑い飛ばせるとは、自分たちよりよほどタフだと思う。
「じゃ、私は仕事に戻ります!また今度、あのオートジャイロにも乗せて下さいよ!」
「……閃電の事ですか?いやいや、さすがにそれには……」
離れていく尾上の背中に苦笑いで手を振りながら、仲嶋は基地司令部へと歩みを進めていった。
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「夜勤明けに済みませんね、用事を言いつけたいんですが」
「ハッ、喜んで」
バルスタン基地司令部の隊長室で、日本陸軍バルスタン基地守備隊司令の松見典夫少佐が仲嶋を待っていた。
体格が良く、半袖防暑衣から覗く二の腕は太いが、しかし、部下に対しても必ず敬語を話すなど、見た目によらず物腰が柔らかなそのギャップにはナイスミドルの雰囲気が漂っている。良いところの坊ちゃんという話も聞いていたが、その良いところの坊ちゃんが何故こんな辺境の守備隊司令なんかになっているのかまでは仲嶋は知らなかった。
「ダグラム空港まで飛んでくれますか?ここまで運んで欲しい人が居るんです。」
「ハ、政府からの査察官ですか?抜き打ちですね、ビックリです。」
わざわざ基地航空隊の貴重な一機を迎えに差し向けるのだから、偉い人の訪問なんだろうなと、仲嶋は思った。治安の悪いアザディスタンで陸路移動となると、護衛車両を付けたとしてもいくばくかの不安が残ってしまう。テロリストだけでなく、強盗団なども獲物を待ち構えているのだ。街と街との距離がある不毛の地では、そういった非合法の武装集団のキャンプもポツリポツリと点在して、その数は脆弱な政府軍の掃討作戦などでは一向に減る気配がない。これまでも仲嶋は政府関係者を何度か首都の空港まで送り迎えした事がある。どいつもこいつも、砂塵に顔をしかめてふて腐れたような顔をしている嫌な奴だった。
「いえ、今回は民間人です。国際NPOのエージェントで、このバルスタンでの事業の助言役として政府に任命された、という事らしいですが。」
「民間人…ですか。それはまた珍しい積荷ですね」
仲嶋は口をひん曲げた。国際NPO?エージ
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