乱れ混じる想いに
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を開けて主を見つめることしか出来ない。
「敵の武骨で美しくない要塞を華麗な方法で打ち崩し、優雅で美しいわたくし達が切り裂く……これこそ攻城戦の美学ですわ」
ぐるりと一巡見回す。麗羽は本心を含ませていた。
信頼を置く王佐の発案と、袁家の財力と人材、技術力を以ってすればこそ作れたモノは、彼女にとって何より美しく見えた。
人は利便性を求め、思考錯誤を繰り返して進化してきた。カタチとしてそれが為される様は、感動すら覚えるモノであった。
「……見なさいっ」
バッ……と大仰な手振りで示す先には幕が張られた大きな物体。中身は袁家の攻城秘密兵器。夕の合図で布が外され、中身が露わになると同時に、兵達からどよめきが上がる。
「これぞ、袁家による才と財の結晶! これさえあればあんな城などけちょんけちょんのぎったぎたですわっ! お〜っほっほっほ!」
皆がぞっとしていた。そして自分達に向けられなくて良かったと、心底安堵していた。
自分達の虎の子が使うモノより遥かに大きい物体が其処にはあった。何倍も大きいのであれば……どれだけの威力が出るのか、兵士達には想像もつかない。
ただ、心に来る安心感だけは、確かに膨らんだ。
幾分、乾いた音が二回鳴る。麗羽が手を叩き、皆の視線を集めた。兵士達の目からは、攻城戦に対する不安が全て消えていた。
「さあ、行きなさい! 袁家の勇者達よ! 雄々しく、美しく、華麗にあの城を打ち崩し……勝利と栄光をっ!」
応える雄叫び、天を衝く。油断と慢心は無く、自信と興奮に満ち溢れた声であった。
明と斗詩は、互いに目を合わせて頷き合い、己が仕事の為に持ち場へと動き出した……大きな槍を打ち出す兵器を引き連れて。
†
土煙を上げて近づいて来た大軍。黄金に輝く鎧は光を反射して眩い。城壁の上、秋斗はうざったそうに目を細めていた。
まだ遠く、何故か一か所に旗が纏まっているその軍は、一定の距離を以ってピタリと動かなくなった。
「めちゃくちゃ遠かったのにバカみたいな高笑いが聞こえたんだが……アレが袁紹の声か?」
「……そうだ」
うんざり、と言った様子で、麗羽を良く知る秋蘭が頷く。
敵軍の鎧の色をじっと見やって、どうやったらそんな色に染められるのかと彼は不思議に思った……が、さすがに今は聞かない。氣の概念になんにせよ、この世界は彼の理解の範疇を超えている部分があり過ぎる為に。
辺りをせわしなく見回していた真桜の目に、そこかしこで振られた旗が映った。城壁の上のあちこちと……城壁の下のあちこちで。
「兄やん、投石器とアレの準備、ばっちりやで。下の奴等も、“その下の奴等”も……な」
真桜は悪戯を仕掛けた子供のような笑みを浮かべた。この砦での防衛
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