乱れ混じる想いに
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身とでも言おうか。それとも人の業とでも言うべきか。発展した現代でも紙の束に人生を左右されるモノなど溢れかえっている。
人の世をより良くする為に生み出されたモノではあるが、金という力の魅力に取り入られれば、人は堕ちてでも求めてしまうのは世の常。
麗羽は袁家の傀儡として過ごしてきたが故に、この色が自分を守ってくれているのだと知っている。そしてこの色が人を救う為に必要だとも知っている。
だから、彼女はこの色が嫌いでは無かった。
居並ぶ袁紹軍の兵達の前、麗羽は優雅に、そして優美に馬の上で微笑んでいた。
仰々しい鎧は力の証。本心を隠してくれる、黄金の虚飾でもある。しかし、兵達には彼女の本来の姿など分かろうはずもない。見たまま、感じたままが全てである。金の力であれなんであれ、主が自信に溢れている事こそが、この戦場前に於いては何よりの心の安息。
「皆さんっ」
麗しい声は良く通った。仮面を付けた麗羽の本気は、自信に溢れているが故に。
華麗な動作で片手の甲を口元に持って行った麗羽は、不敵に笑った。
「敵は我が袁家の威光と、あなた方の雄々しく勇ましい戦いぶりに恐れ慄き、亀の如く城に引き籠ってしまいましたわ」
バカにした笑いを含み、目を細めて言い放てば、兵達の心にもその心が伝わる。
大したことは無い。見ろ、我らが勝利を主は疑っていない、と。
「あの幽州の大戦と同じく」
そのまますっと顎に手を持って行った。碧の瞳が鋭く輝く。普段なら高笑いをしているはずが……今回の彼女は違った。
思い出させるのは勝利の戦。あの時も、こちらが兵数の有利を以ってして敵を城に押し込んだのだ。
状況はほぼ同じ……だからこそ、彼らは思い出す。彼の白馬の王が、怒りに燃えて打って出た時にどれだけの命を蹂躙したかを。
記憶に新しい事実は、慢心が湧き立ち始めた心に緊張の糸を張りつめさせた。
「分かりまして? 窮鼠猫を噛む、という言葉を心に刻み込みましょう。失敗を生かせないようでは、勝利と栄光は手に入らないのですから」
応、と上がる返答は力強く、彼らの精神状態をより良いモノへと導く。
満足したのか、麗羽はまた手を半円、優美に上げて行く。
次に何を言うのか、意識を尖らせて待つ兵達には期待が浮かぶ。
「さて……袁の勇者達よ、わたくし達は美しいっ」
「っ!」
戦の前口上は自分が……と言っていたのだが、麗羽に任せてくださいなと言われて預けていた明。
夕が考えたであろうそれに最後方で堪らず吹き出した。
どんな発言が出ても合わせるつもりだったのに、余りにおかしな言葉を発したので耐えられなかったのだ。
斗詩は麗羽の自信満々で自然な様子を見て、呆れのため息を零していた。
そして兵達は……ポカンと口
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