乱れ混じる想いに
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、自分の心は緩んでしまっていたのだろう。
彼女と生きられる事が嬉しすぎて、弱くなってしまっていたのだろう。
嘘つきでいよう、貫き通そうと思っていたのに
涙を零す自分を抱きしめた彼女に
抑え切れず……全てを話してしまった。
自分が他の世界から来たことも
この世界の歴史を曖昧ながら把握していたことも
長くて辛くて苦しい乱世が終わらなかった事も
自分が何度繰り返してきてのかも
確かにあった幸せも
彼女を何度死なせてしまったのかも
彼女が本来辿るべきだったはずの結末も
全て、全て、話してしまったのだ。
じ……と、聞いていた彼女は、自分を見て笑った。
涙を零しながら
泣き笑いで、絶望の底に堕ちながら、彼女は笑った。
大変だったのか、とか
辛かったか、とか
大丈夫、この世界では過ごしたのは全部事実だから、とか
自分とあなたは確かに此処に生きている、とか
そういう言葉を期待していたのかもしれない。
しかし、彼女は全く思いもよらない言葉を発した。
“嘘つき”
“皆がどんな想いで戦ってきたと思ってるのか”
“誰かの幸せと居場所を奪ってまで、幸せになんかなりたくない”
そうして、人の心を大切にしていた優しい彼女は絶望の底
短い刃で彼女自身の首を引き裂いた。
吹き出る赤、赤、赤が身を染める。
昏い暗い瞳が頭から離れなくなった。
自分の目の前で、彼女は死んでしまった。
世界は、残酷でしかなかった。
たった一つの選択で、たった一度の弱さで、
大切な彼女を殺してしまった。
嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき
脳内で反芻される声に耐えきれず絶叫を上げ、自分の意識は闇の底に堕ちた。
嘗て覇王が言っていた。
『人は、一度きりの人生で幸せを掴もうと足掻き、もがき、苦しむからこそ美しい』
『誰もが後悔しないように精一杯生きている。後悔の果てに繰り返して得るマガイモノよりも、自分の手で掴みとったモノこそ真実にして価値があるのではないか』
『乱世で失わせた命は未来を創る大切な糧。それを喰らっても前に踏み出せず過去に生きるというのなら、皆は何の為に殺し殺され死んだのか』
そういう事だ。
自分は嘘を貫き通さなければならない。
この世界の真実を知っている自分だけは、役割を演じる道化師にならなければならない。
そしてまた、この残酷な世界は繰り返した。
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