第百七十九話
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第百七十九話 ライゾウの歯
ある日ライゾウは家の中に一緒にいるタロにこんなことを言った。
「最近歯がな」
「どうしたの?歯が」
「奥歯、右の上のところがな」
その歯がというのだ。
「痛いんだよ」
「それって虫歯じゃないの?」
その言葉を聞いてだ、タロはすぐにライゾウにこう言った。
「それはよくないよ」
「虫歯ならか」
「虫歯ってね、何でもないようでね」
「実は怖いんだな」
「いつも痛むしその穴からバイ菌も入ってね」
「さらに厄介なことになるんだな」
「痛くてあまり寝られなくなるし」
「おいおい、それは嫌だな」
ライゾウはタロのその話を聞いて顔を顰めさせた。何しろ猫であるので寝ることが一番楽しいことだからである。
「あまり寝られなくなるなんてな」
「そう、だからね」
「早いうちに何とかしないと駄目か」
「さもないとどんどん悪くなってね」
その虫歯ば、というのだ。
「余計に酷いことになるよ」
「じゃあご主人に言うか」
ライゾウは前足を組んで言った。
「華奈子ご主人にな」
「それがいいね」
タロもこうライゾウに返す。
「こうしたことは僕達ご主人様任せだから」
「使い魔はな」
「そう、健康のことはね」
「ご主人次第のところもあるからな」
「ある程度は自己管理だけれどね」
それでもだった。
「虫歯になるとね」
「まずご主人に見てもらわないとな」
「そうしてどうするか決めてもらわないと駄目だから」
「それでだな」
「うん、ご主人様が帰られてからだよ」
華奈子が学校から帰ってからというのだ。
「その時からだよ」
「そうだな、じゃあな」
それでと言ったライゾウだった、そしてだった。
その場に寝転がってだ、タロにあらためて言った。
「ご主人が帰るまで寝てるぜ」
「寝るんだ」
「待つ間はこうするのが一番だからな」
それで寝ると言うのだった、実際にライゾウはそのまま眠りに入った。そうして華奈子の帰りを待つのだった。
第百七十九話 完
2014・10・24
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