第二十八話 横須賀の思い出その十七
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「あとは別にか」
「いい答えだね」
「院長さんに言われたんだよ」
横須賀にいる彼にというのだ。
「金は何とでもなるものだけれどさ」
「友達は、だね」
「人と人の付き合いはそうはいかないってさ」
「その通りだね、人はね」
「ああ、絆ってのは簡単には出来ないよな」
「偶然出来たりしてもね」
「簡単に切れてな」
「切れるとね」
一旦だ、そうなると。
「中々戻らないね」
「ずっとなんてざらだとも言われたよ」
「その通りだよ、だからね」
「金なんかよりも人を大事にしろってな」
「言われてたんだね」
「ガキの頃からさ」
「その通りだよ、僕もね」
ここで自分のことを話す智和だった、知的な微笑みで。
「絆は大事にしているつもりだよ」
「先輩の大切な絆は何なんだ?」
「色々あるけれど祖父だね」
「お祖父さんか」
「そう、お祖父さんとの絆がね」
それが、というのだ。
「今でも一番大事だと思っているよ」
「お祖父さんのこと尊敬しているんだな」
「うん、そうだよ」
その通りだというのだ。
「もう亡くなったけれどね」
「それでもか」
「僕はお祖父さんとの関係を今もね」
「大事なんだな」
「尊敬していてね」
そして、というのだ。
「忘れていないよ」
「絆は相手が死んでも続くんだな」
「そういうものだと考えているよ」
この考えは智和も祖父の死からわかったことだ、人は経験から知っていくが死はその中でもとりわけ重要な経験だ。
それでだ、薊にも言うのだ。
「ずっとね」
「それでその人はか」
「生きていくんだよ」
「お祖父さんもだな」
「うん、その通りだよ」
彼の心の中で生きているというのだ、こう話してだった。
智和は自分の車が来たのを見た、そのうえで薊に言った。
「それじゃあ今日はね」
「ああ、これでお別れだな」
「一学期に会うのはこれで最後かな」
「かもな」
間も無く一学期が終わる、それでだ。薊もその期間のことを思い出してそのうえで智和に対して答えたのである。
そうした話をしてだ、智和は車に乗り。
自分の家に帰った、薊も寮に戻った。一学期が終わろうとしているその中で。
第二十八話 完
2014・8・16
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