第二十八話 横須賀の思い出その十六
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「ジャンプもだよな」
「今の様にね」
「ただ跳ぶんじゃなくてか」
「考えて跳ぶとね」
「闘いに幅が出るな」
「その幅を頭を使って闘うとね」
「今みたいにいけるんだな」
薊は智和に笑って応えた。
「そうなんだな」
「うん、ただね」
「ただ?」
「まさかあそこでああした投げをするなんてね」
「バックドロップのことかよ」
「それを出すとは思わなかったよ」
こう薊に言うのだった。
「咄嗟の機転にしてもね」
「いつものことだけれど閃いてさ」
「それをやってみたんだね」
「ああ、バックドロップなんて技拳法にはないけれどさ」
それでもだというのだ。
「やってみたんだよ」
「綺麗に入っていたよ」
「相手の脳天を割るにはいい技だからな」
俗にブレーンバスターが脳天割りというがこれは実は相手の背中を叩き落とす技で脳天は攻めることはない。
「パイルドライバーの方がよかったか」
「あの技だね」
「そっちの方がよかったかね」
「いや、バックドロップでもね」
薊が使ったその技でもだというのだ。
「効果があるからね」
「いいっていうのかよ」
「うん、正解だったと思うよ」
「だといいけれどさ」
「それじゃあね」
「ああ、闘いも終わったしな」94
薊は今はにこりと笑って智和に答えた。
「帰ろうか」
「僕の車もそろそろ来るしね」
「凄いよな、車で送迎なんてな」
薊は智和のこのことについても言った。
「先輩って本当にお金持ちだよな」
「そう言われると恥ずかしいね」
「いや、実際にお金持ちだろ」
笑って言う薊だった。
「先輩は」
「よく言われることだけどね」
「やっぱりお金はあった方がいいよな、けれどあたしは」
「君は?」
「お金が必要なだけあればってさ」
「そう考えているんだね」
「何かあまり執着がないんだよ」
金には、というのだ。
「特にさ」
「じゃあ執着しているものは」
「ううん、友達かね」
腕を組んで首を捻るいつもの仕草でだ、薊は答えた。
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