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美しき異形達
第二十八話 横須賀の思い出その十四
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「そのことはわかっておいてね」
「わかったさ、けれどな」
「けれどなんだ」
「あたしだって本気だからな」
 これが薊の返事だった。
「あんたが幾ら硬くて素早くてもな」
「勝つっていうんだね」
「弱点のない奴なんていないんだよ」
 薊の持論の一つだ。
「倒せない相手ってのはな」
「じゃあ僕もなんだね」
「そうさ、倒してやるぜ」
「じゃあ。そうしてくれるかな」
 こう言ってだ、怪人は。
 間合いを素早く前に詰めてきた、薊はその動きを見て右に動いてだった。
 棒を今度は左手に持ち替えて、そして。
 右から左に振った、打撃の攻撃だった。
 だがその一撃はだ、あえなく。
 怪人の甲羅の前に防がれた、棒は鋭い音を立てて弾き返された。そしてその返す刀でだ、怪人はさらに間合いを詰めて。
 右手の鋏で切り掛かって来た、それは薊の首を狙っていた。
 しかし薊はそれを屈んでかわした、それと共に。
 身体を左から右に回転させて左の足払いを仕掛けた、だがそれも。
 怪人は素早く上に跳んでかわした、そうして後ろに着地してから言った。
「お見事」
「鋏をかわせたからかい?」
「棒と足の攻撃もだよ」
 それも含めての見事だというのだ。
「いい攻撃だね」
「そう言うんだな」
「うん、けれどね」
「けれど?」
「僕の甲羅と素早さにはね」
「あたしのその見事な攻撃も意味がないか」
「当たっても効果がないとね」
 薊の先程の言葉の通りだ。
「意味がないね」
「そうだよな、けれどな」
「しかしだね」
「弱点のない奴はいないからな」
 またこう言う薊だった。
「勝つさ」
「じゃあどうするのかな、今度は」
「さてな、手の内を見せたら負けだしな」
 そして、というのだ。
「それに今はその手の内さえ考えてる最中だよ」
「成程ね」
「じゃあ行くぜ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 薊は再び棒での攻撃をはじめた、怪人も鋏を繰り出す。
 激しい攻防が展開された、しかし。
 薊の攻撃は甲羅の前に防がれる、相手の素早さの前に苦労して攻撃をぶつけてもだ。それでもであった。
 金属音めいた音だけが聞こえる、そしてその音を聞きながら。
 怪人は己の攻撃を繰り出しながらだ、楽しげに言った。
「いい攻撃だけれどね」
「効いてないんってんだな」
「そうだよ、全くね」
 こう言うのだった。
「残念だけれどね、君にとっては」
「そうだよな、けれどな」
「けれど?」
「言ったよな、考えてるって」
「うん、確かに言っていたね」
 怪人もその通りだと返す、やはり攻防を繰り返しながら。
「それは」
「そうだよ、それがまとまってきたよ」
「じゃあ僕を倒すのかな」
「見るといいさ」
 薊はにやりと笑って言った、
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