Episode32:アイス・ピラーズ・ブレイク
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気持ちはよく分かった。
しばらくすると、雫が天幕へ戻ってきた。俯いているせいか、髪に隠れてその表情は分からない。けど、何かを堪えているかのように隼人には見えた。
「お疲れ様、雫」
隼人の手が雫の頭に乗せられた。それでも、雫は顔を上げない。ただ、その華奢な手が隼人の燕尾服を握り締めていた。
「いい試合だったけど、残念だったね」
「…うん……隼人、私、悔しいよ」
握り締めた手に、更に力が篭る。淡々とした口調だったが、雫の本音を読めない隼人ではない。
しな垂れる雫の体を抱きとめて、隼人は雫の頭を撫でた。
「最初から、勝てるとは思ってなかった」
「うん」
「でも、手も足も出なかった」
「うん」
「…無力だった…悔しい、悔しいよ」
「……うん、お疲れ様。雫」
隼人が雫を抱き締めている(第三者視点)のまま少し経ち、やがて雫は体を離した。
「ごめん隼人…もう、大丈夫」
「そっか」
顔を上げた雫の頬に赤さはあれど、涙の跡はなかった。
「……隼人、勝ってね」
「勿論、最初からそのつもりだよ」
隼人の次の試合は第三高校のエース、一条将輝だ。一筋縄でいかなくとも、負けるつもりなど最初からない。
「ああそうだ。雫、次の試合、CADを貸してくれない?」
唐突な申し出に、雫は首を傾げたが、言われた通りに握っていた拳銃形態の特化型CADを隼人に手渡す。
「うん。よし、じゃあ俺は次の試合コイツで決めてくるよ」
「え?」
「雫の魔法が、無力じゃないことを証明する」
微笑んで、隼人は雫のCADを燕尾服の内ポケットの代わりについている拳銃ホルスターに差し入れた。
「雫の為に、勝ってくる」
驚き、そして雫は微笑んだ。
「いってらっしゃい」
ーーto be continuedーー
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