Episode32:アイス・ピラーズ・ブレイク
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かべていた。
「…よく眠っているな」
「本当に。熟睡してますね」
誰もいないはずの櫓の中。ベンチに座って、隼人とエイミィが穏やかな寝息を立てていた。それもエイミィは隼人に膝枕されて、だ。
「こんなに気持ち良さそうに眠っていられると起こすのが躊躇われるが…まあ、時間もないし仕方ないか。深雪、俺は器具の調整を始めるから、隼人とエイミィを起こしておいてくれないか?」
「分かりました」
深雪にお願いして、達也はテキパキとCADの調整器具を用意していく。とは言え、彼が担当する選手で一番最初に出場するエイミィのCADは既に調整済みだ。あとは、本人に感触を確かめてもらってから微調整するつもりである。
背後で物凄くテンパっている友人にどう声を掛けようかと思案している彼の表情は、きっと生き生きとしているに違いなかった。
「…あー、首痛い」
「座って寝ているからだ。大丈夫なのか?」
「別に支障はないよ。それに、首の痛みくらいで他の人に遅れは取らないさ」
まあそうだろう。隼人の真の実力、その一端を知っている達也からしてみれば隼人の言った通りであった。
「エイミィは?」
「顔色はまあ良くなってはいたかな。少しでも効果があってよかったよ」
(むしろドーピング気味な気がするのだがな)
エイミィにとって、隼人の膝枕と子守唄のコンボはそれ程までに大きな意味を持っていたのだ。
(空回りしなければ、いけるだろう)
最後の調整を終え、達也はエイミィのCADを手に取った。
全長50センチの無骨なショットガン形態・特化型CAD。
達也により手渡された少女には不釣り合いなソレを、エイミィは手慣れたようにウェスタンムービーのようにクルクルと振り回し、その銃口を窓の外へ向けた。
「……エイミィ、貴女本当は、イングランド系じゃなくてステイツ系でしょう?」
「違うよ深雪さん。グラン・マの実家はテューダー朝以来『サー』の称号を許されているんだから」
「随分詳しいんだな、隼人」
「ま、色々あったからね」
苦笑い混じりでそう言う隼人の横で、エイミィは銃口を窓に向けたポーズのままCADにサイオンを流した。
「どうかな?」
「うーん…雫の気持ちが分かりますねぇ」
「問題ない?」
「ええ、バッチリです」
☆★☆★
隼人の出番は男女合わせて一番最後、大トリを飾ることになっている。
今は櫓の上に立って冷静に魔法を操る雫の試合の観戦中。昨日のスピード・シューティングに引き続き雫は好調なようで、相手選手の魔法を氷柱への情報強化の魔法で補強することで受け流している。
やがて試合終了のブザーが鳴り、自陣の氷柱が一本倒された所で、雫の勝利が決
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