第三章
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「一反木綿でごわす」
「へえ、一反木綿どんか」
「それが御前んさあの名前でごわすか」
「飛んでいて疲れてたまたま畳の上で寝ていたでごわすが」
二人の家の中でだ。
「そうしたら捕まったでごわすよ」
「褌と思ったでごわす」
あっさりと返すかよだった。
「うちの旦那の」
「おいどんは褌ではなかと」
間違って、というのだ。
「妖怪でごわす」
「そうでごわしたか」
「全く、災難だったでごわす」
「いやあ、着心地はよかったでごわすが」
「今回は知らなかったので仕方ないでごわすが」
こうは言ってもだ、苦々しく言う妖怪だった。
「今度したら祟るでごわす」
「そうでごわすか」
「だから二度としないでごわすか」
「こっちも着けるのは褌でごわす」
徳兵衛も笑って妖怪に返す。
「一反木綿さんは褌ではないでごわす」
「その言葉絶対に守るでごわす」
怒りながら言う妖怪だった。
「ものと穴の感触、それに毛があちこちに付いていて気持ち悪くて仕方ないでごわす」
「風呂に入ったばかりでごわすよ」
「それでも汚いものは汚いでごわす」
妖怪は目も怒らせている、そのうえでの言葉だ。
「わかったら二度としないでごわす」
「よくわかったでごわす」
「それではでごわす」
徳兵衛にもかよにも強く言ってからだ、そのうえで。
妖怪は二人にだ、あらためて言った。
「ではお暇をさせてもらうでごわす」
「もう帰るでごわすか」
「こんな家はすぐに離れたいでごわす」
目は怒ったままだ、そのうえでの言葉だ。
「褌にされたことははじめてでごわす」
「いやあ、災難だったでごわすな」
「確かにそうでごわすな」
二人もその一反木綿に言葉を返す、しかしあまり反省している素振りはない。
「おいどんも褌にはなりたくないでごわす」
「おいどんもでごわす」
「考えてみればそうでごわす」
「御免蒙るでごわす」
「こんな家は二度と来ないでごわす」
「というか。勝手に家に入って休まなければでごわす」
「褌にもならなかったでごわすな」
夫婦でこのことに気付いた。
「考えてみれば妖怪どんが悪いでごわす」
「誰に断って休んだでごわすか」
「えい、だからもうしないでごわす」
遂には逆に怒って言う妖怪だった、そして。
夫婦に別れの言葉を告げてふわふわと飛んで何処かへと去って行った、二度と振り返ることなく。そして。
妖怪が去った後でだ、かよは風呂場の端の方を見て丸出し姿に戻っていた亭主に対してこんなことを言った。
「そこに落ちているでごわすよ」
「そうでごわすか」
「では、でごわすな」
「早速着けるでごわす」
その褌を、というのだ。そして。
実際に彼は褌を手に取って身に着けてだ、女房に言った。
「さて、
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