第六章
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「牧師様に相談がある方が」
「来られましたか」
「会われますか」
「それが私の務めですから」
悩む者の悩みを聞きそれを救う、それこそが牧師の務めだというのだ。
「ですから」
「それでは」
「はい、こちらにご案内して下さい」
礼拝堂には十字架がある、ステンドグラスを背にしているキリストがいる。そのキリストの前で相談を受けようというのだ。
その彼の前に来たのは二人だった、その二人は。
一人はすらりとした長身にブロンドの整った髪と青い目の白人の青年だった、陸軍下士官の軍服を着ている。そして。
もう一人も陸軍の下士官の軍服だ、褐色の肌と短い髪の黒人だ。ジョーンズは二人が礼拝堂に入って来たのを見てわかった、その時が来たと。
だが彼は逃げなかった、ここでその迷いに答えることにした。そうして。
二人を前にしてだ、穏やかな声でこう問うた。
「何のご用件でしょうか」
「はい、実は」
二人同時にだった、ジョーンズに言って来た。
「私達は同性ですが」
「互いに愛し合っているのです」
「このことは間違っているのかどうか」
「牧師様にお聞きしたく」
それでだとだ、二人はジョーンズに切実な声で話す。
「それで参りました」
「お答えを頂きたく」
「左様ですか」
「キリスト教の考えでは間違っていますね」
「そうですね」
そのキリスト教の考えも言うのだった、二人は。
「ですがそれでもです」
「牧師様にお聞きしたいのです」
「私達の愛が正しいのか間違っているのか」
「そのことを」
「私だからですか」
「はい、牧師様だからです」
「それでなのです」
牧師ではなくだ、彼に聞きたいというのだ。
「ですから」
「こちらに伺いました」
「そうですか、それで」
ジョーンズは一人の人間として二人の言葉を受けた、そのうえで。
二人を見た、見れば。
距離は近くそれぞれが放つ気は穏やかであるが確かに二人を向いていた、そうしてそのうえでなのだった。
二人共だった、その目の輝きは。
澄んでいた、そこには一点の澱みもなかった。その目を見てだった。
ジョーンズはわかった、答えが。そして二人にどう答えるべきかも。
一旦目を閉じてだ、それから。
その目を開いてだった、こう二人に答えた。
「私はお二人の愛を認めさせて頂きます」
「そう言って頂けるのですか」
「私達を」
「愛、それが純粋で互いを思いやるのなら」
それならばというのだ。
「例え同性でもです」
「それならですか」
「構わないのですか」
「はい、いいのです」
それならというのだ。
「神もきっと許して下さいます」
「その愛が純粋なものなら」
「それならば」
「そうです、構わないのです」
それでだというのだ。
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