第三章
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「ですから法は守らなくてはなりませんが」
「合衆国の法も」
「それも」
「憲法もまた大事です」
そうなるというのだ。
「しかしです」
「聖書とどちらが大事か」
「それは」
「あえて言うのなら双方がです」
聖書も憲法もだというのだ。
「大事なのです」
「それでは」
「この問題も」
「難しいことです、それ故に同性愛の問題も」
軍におけるそれもというのだ、もっと言えば中絶問題やそうした話にもなる。合衆国の問題の多くに関わることだった。
「非常に複雑です」
「容易に答えが出ない」
「そういうものですね」
「そう考えています」
こう将校達に話すのだった。
「非常に」
「牧師様もですか」
「そう仰いますか」
「私達も悩んでいますが」
「牧師様も」
「この問題は長く続きます」
このことは間違いないというのだ。
「私は暫く向かい合うことにします」
「わかりました、それでは」
「我々もです」
「このことについてはまだ結論を出さないことにします」
「考えていきます」
「このまま」
将校達も難しい顔でジョーンズに答えた、そしてだった。
ジョーンズ自身もこのアメリカ軍の中の同性愛の問題に従軍牧師として考えて向かい合っていった、しかし何年経ってもだった。
答えは出ない、それで彼は同僚でもあるシスターのナンシー=スチュワートに仕事の合間に軍の施設の中で彼女に対して難しい顔でこう言った。
「シスターは神に仕えていますが」
「はい」
ナンシーはその澄んだ琥珀の目と楚々とした白い顔をジョーンズに向けて応えてきた。長身がシスターの服に包まれている。
「それでもというのですか」
「やがて結婚されますね」
「そうですね、今は神にお仕えしていますが」
彼等の宗派は聖職者の婚姻が認められている、ルター派であるからだ。
「相手の方が神により私の前に出てくれれば」
「その時にですね」
「そう考えています」
「それが同性であったのなら」
こうナンシーに問うのだった。
「どうされるでしょうか」
「つまりそれは」
「シスターの場合はレズビアンになりますね」
「そうなりますね、確かに」
ナンシーもその通りだと返す。
「その場合は」
「はい、その時はどうされますか」
「難しい問題ですね」
実際に考える顔で答えたナンシーだった。
「このことは」
「やはりそう仰いますか」
「キリスト教では同性愛は禁じられていますので」
ナンシーもこのことに言及する、神に仕える者として。
「その観点から言えばです」
「それは許されないですね」
「そうです。しかし」
「それでもですか」
「あくまで私の考えですが」
この言葉を出してからだ、ナンシーはジョーンズに話した。
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