第148話
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を差しながら走って行く。
角を曲がると麻生は立ち止まって、携帯をいじっていた。
しかも傘を差していないのか、全身ずぶ濡れだ。
それに顔には若干の焦りの色が見えた。
一瞬、声をかけるのが躊躇われたが雨の中時間をかけて捜した意味がない。
「ようやく見つけたわよ!」
いつもの調子で麻生に話しかける。
自分は雨にかかってしまうが、自分より濡れている麻生を放っておく気になれなかった。
小さいビニール傘を麻生の方に向ける。
美琴の言葉と雨がかからなくなった事に気がついて振り返る。
「何だ、美琴か。
こんな時間に何の用だ。
門限、結構やばいだろ。」
短い期間とはいえ常盤台に一時編入していた麻生だ。
寮の門限がどれくらいなのか分かっている。
「まぁ、気にしなくてもいいわよ。
ちょろっと工夫すれば問題ないわよ。
それより、これ。」
そう言って携帯ショップでもらったビニール袋からゲコ太とピョン子のストラップを出して差し出す。
それを見た麻生は眉をひそめる。
「何だこれ?」
「ゲコ太とピョン子よ。
ペア契約の時にアンタの分も貰えたの。」
「いや、俺は入らないが。」
「私も持っているんだから貰っときなさい!
そ、その、罰ゲームとはいえ付き合せたんだから・・・・」
ずい、とさらに麻生に向かって突き出す。
これは貰わないと話が終わらないなと思って渋々受け取る。
そのままポケットに突っ込もうとした所で美琴は言う。
「それ、今すぐつけなさい。」
「はぁ?
何でだ。」
麻生は面倒くさそうな顔をする。
「今つけないとアンタ、一生つけなさそうなのよね。
だから、今ここでつけなさい。」
ええ〜、と明らかに嫌そうな顔をする。
麻生はこのストラップに一切の魅力を感じない。
何より、あの麻生恭介がこんな子供向けのストラップをつけている所を知り合いに見つかれば笑い者にされるだろう。
拒否し続ける麻生だが痺れを切らした美琴は強引な手を使う。
「ああもう!!」
そう言って、手に持っている麻生の携帯を奪い、ゲコ太も奪い取る。
麻生は何か言っているが全く気にせず作業を続ける。
数分後、麻生の携帯に見事にゲコ太のストラップが取り付けられた。
ご丁寧にきつく縛ってあり外すのに時間がかかりそうだった。
能力を使えばすぐなのだが、こんな事に能力を使うのも馬鹿らしい。
「あ、あと、私の携帯のアドレスと番号もと、登録しておいたから。」
数分かかったのはおそらくこれが原因だろう。
「べ、別に勘違いしないでよね!
ペヤ契約したのにお互いのアドレス知らないとか、何のためのペヤ契約だろうと思ったからよ!!
深い意味はないんだからね!!
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