第一章
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パンとコーヒー
浜崎岳は朝起きてだ、彼女であり同棲相手である岬菫にだ、こう言われた。
「御免、買い忘れてね」
「ってことは、だよな」
岳もすぐに菫に返した。
「今朝は」
「御飯は昨日の夜全部食べたから」
「ないんだよな」
「そう、パンも御飯もね」
こう言われた、その菫に。
「何もないのよ」
「野菜もかよ」
生で食べるそれもだ。
「ないのかよ」
「昨日本当に全部食べたから」
「冷蔵庫の中は空か」
「牛乳もね」
本当に何もかもないというのだ。
「ないのよ」
「参ったな」
岳はここまで聞いて呟く様に言った。
「それは」
「かなりね」
「つまり俺達朝は何も食えないんだよな」
「何もね」
それこそ何もかもをだ。
「インスタントラーメンもないから」
「本当にそれこそ何もないんだな」
「そうなのよ、食べるものがね」
「金はあるよな」
二人共大学を出て働いている、岳はスーパーの店員で菫は塾の事務員だ。岳は正社員で菫はパート扱いだ。
岳は黒髪を耳まで伸ばし細い眉は上を向いている、目の光は強く口元は引き締まっている。細面で鼻は高い、一八〇程の長身で痩せているが引き締まった身体だ。
菫は小柄であり一四六程だ、長身の岳と並ぶとより一層小さく見える。一重の目ははっきりとしていて優しい感じだ。濃い目のピンクの唇から白い歯が見える。黒髪を肩のところまで伸ばしているがさらさらとしている。眉はやや薄めだ。
その岳がだ、難しい顔でテーブルに座ってから菫に言った。
「幸い今日は俺達はな」
「ええ、どっちもオフよ」
休日だとだ、菫も言う。
「それでお金もあるわ」
「だったら一つだよな」
「食べに行く?外に」
「そうするしかないだろ」
食べたいのに家には何もない、それならだ。
「やっぱりな」
「そうよね、じゃあ部屋出てね」
「食いに行くか」
「それで何食べたいの?」
「そうだな、今朝はな」
岳は腕を組んで少し考えてからだ、菫に答えた。
「パンとコーヒーだな」
「そのl組み合わせね」
「ああ、それにしような」
「じゃあ喫茶店に行ってよね」
「モーニング食おうな」
こう菫に言った。
「そうしような」
「それで朝御飯食べてから」
「それからよね」
「スーパーに行ってな」
そうして、というのだ。
「食いもの山程買ってだよ」
「二度とこんなことがない様にしましょう」
「正直困るからな」
冷蔵庫に何もない、インスタントラーメンすらないのではだ。
「金があっても」
「本当にな」
「ああ、だからな」
それでだと話してだ、そしてだった。
二人で部屋を出た、そのうえで岳は菫にこう言った。二人共少し外出する感じのラフな
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