第四章
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三人共好きなものだった、それでだ。
そのそれぞれの料理を三等分してだ、こう言うのだった。
「皆で三分の一ずつ食べましょう」
「あっ、そういえば」
ここで朔はわかった、数年前に妻が喫茶店で言ったことを。
「美菜ちゃん喫茶店で言おうとして途中で止めたけれど」
「後ね、と行ってね」
「うん、言うことを止めたね」
「実はね」
「この子が出来た時のことを考えてなんだ」
「あの時は二人だったけれどね、けれど朔君と結婚して子供が出来た時はって思って」
そう考えてだったというのだ。
「言おうと思ったけれどね」
「どうなるかわからないからね」
「ええ、それでね」
「途中で言うのを止めたんだ」
「どっちからどれかになったけれど」
二つだからどっちだ、しかし三つ以上になるからどれかだ。その言葉のやり取りの後でだ。
それでだ、こうも言ったのである。
「それでもね」
「好きなものはだね」
「分け合いましょう」
「家族で」
「それが家族ってものだから」
交際している時も、というのだ。
「だからね」
「そうだね、じゃあね」
「ええ、このままね」
「三人で三分の一ずつね」
「この娘も入れてね」
笑顔で娘も見て言う美咲だった。
「そうしてね」
「うん、三人でね」
「分け合ってね」
「楽しくやっていきましょう」
家族でとだ、笑顔で話す二人だった。
そしてだ、美菜は娘にも言った。
「いいわね、美味しいもの好きなものはね」
「わけあって?」
「そう、皆で楽しむのよ」
「うん」
娘は母である美菜の言葉に子供ながらのあどけなさで応えて頷いた、つぶらな黒い目がきらきらとしている。
「そうするわ、私」
「そうしてね、これからも」
「うん、それがいいことなのよね」
「そう、いいことよ」
とてもと答えた美菜だった。
「だからね」
「私もなのね」
「美咲ちゃんも皆も幸せになれるから」
「皆で分け合えば」
「そう、一人が幸せになるんじゃなくてね」
「皆が幸せになれるのね」
「そうなるからね」
だからだというのだ。
「分け合ってね」
「じゃあそうするね」
「絶対にそうしてね」
こう笑顔で話してだ、そしてだった。
三人で食べてだ、朔は最後にこう言った。
「じゃあこれからも」
「ええ、ずっとね」
「分け合ってね」
「そうして楽しんでいこうね」
美菜は結婚する前と変わっていない笑顔で応えた、そこに実際に最高の幸せを見ていてだった。そのうえで。
三人で仲良く食べるのだった、三等分したそれぞれの料理を。
どっちにするの 完
2014・8・17
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