第一章
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ダークサイド
軍も組織であり人の社会の中にある、そして人の社会は常に表と裏がある。
その軍の裏にだ、彼はいた。
フランシス=アラコジは所謂諜報部にいる、表向きは色々な仕事がある。
だがそれは全て表の看板でありだ、実際はなのだ。
「中尉、それではだ」
「はい、次の仕事はですね」
「これまでも何度かあったがな」
上官であるホワン=ルールド中佐が言う。
「情報収集だ」
「その相手の国は」
「ロシアだ」
その国の、というのだ。
「ウクライナ情勢についてな」
「情報収集をですか」
「してもらいたいが」
「ではロシアにですね」
「行ってもらう」
まさにその国にというのだ。
「頼めるか」
「はい」
軍人にとって命令は絶対だ、アラコジはこのことを士官学校の頃から叩き込まれている。それでだった。
ルールドにだ、敬礼空軍のそれ、つまり陸軍と同じもので応えて言った。
「喜んで」
「では頼むぞ」
「私のやり方で、ですね」
「情報収集を頼む」
「その様に」
「うむ、しかしな」
ここでだ、ルールドはアラコジの顔を見た。その顔は鼻が高く青い目は彫りがあり輝きはサファイアの様だ。細面で引き締まった唇で栗色の髪を綺麗に整えている。
長身で均整の取れた身体に空軍の軍服が似合っている。その俳優としても通用する容姿の彼に言った。
「君のやり方はな」
「綺麗ではないと」
「いつもそうではないな」
「相手は限られています」
「女性だけか」
「はい、女性をです」
相手の国の、というのだ。
「篭絡してです」
「それからだな」
「相手の心を掴めば」
それで、というのだ。
「後は楽ですから」
「それであのやり方をしているのだな」
「左様です」
「そうか、相手は君を信じて」
「少しでも教えてくれれば」
そこから、とだ。アラコジはルールドに話していく。
「私は掴んでみせます」
「相手の情報を」
「きっかけだけで充分です」
「しかしそのきっかけはか」
「ベッドの中です」
こう言ってもだ、アラコジは笑わなかった。表情は淡々としている。
「そこできっかけだけでもです」
「多く教えてくれればそれに越したことはないな」
「そうです、ですから」
「今回もだな」
「それで行かせてもらいます」
「そういうことか、ではな」
ルールドは己の思うことを表情に出さなかった、あえて仮面を被ってそのうえでアラコジに対して言った。
「今回も頼む」
「私のやり方で」
アラコジはルールドの命令を受けてロシアに入った、表向きはフランスの舞台関係者としてロシアのバレエの演出を学びに来た、そしてだった。
実際にバレエを観ていった、その中で。
バレエを
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