第四章
[8]前話
「ずっと見ていたいって思ってな」
「じゃあこれって」
「俺達もう一緒にいるからな」
それで、というのだ。
「お互い好きだよな」
「うん、そのことはね」
「だったらな」
「結婚、ね」
「そうしないか?」
こう菫に言うのだった。
「そうしてずっと一緒にいないか?」
「断ると思う?」
菫は泣いていなかった、しかし。
嬉しくて仕方がないといった顔でだ、亮二に答えたのだった。
「こうしたお願い受けて」
「断ることはないよな」
「そう、断らないわ」
とてもだというのだ。
「断る筈ないから」
「それじゃあな、今度の休みの時婚姻届貰って来るな」
「区役所で」
「そうしてな」
そのうえで、というのだ。
「一緒に書こうな」
「うん、そうしようね」
「それじゃあな」
「ずっと一緒にいようね、ところでね」
ここでだ、菫は亮二に彼女から尋ねたことがあった。
「これ琥珀よね」
「ああ、菫ちゃんの目を見てな」
「買ったのよね」
「菫ちゃんのその目が琥珀みたいだからな」
「黒くきらきらとしててな」
「ああ、それでだよ」
「琥珀なのね」
菫は亮二の言葉を聞きながら頷いていた。
「そういうことね」
「そのままだと思うけれどな」
「高かったわよね」
菫は亮二に琥珀の値段のことも尋ねた。
「やっぱり」
「まあ宝石だからな」
それは、とだ。このことは少し苦笑いになって答えた亮二だった。
「それはな」
「ええと、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「あの、結婚するのならね」
ここで菫は顔を上げてだ、亮二に言うのだった。
「指輪必要よね」
「結婚指輪か」
「そう、琥珀買ったけれど」
「高かったからな」
「ってことは」
「今菫ちゃんに言われるまでな」
まさに今の今までだった。
「忘れてたよ」
「じゃあ結婚しても結婚指輪は」
「絶対に買おうな」
これが亮二の返答だった。
「金が溜まったらな」
「そういうことになるわよね」
「ああ、それじゃあな」
こう話してだ、そしてだった。
結婚指輪は後になった。しかし菫は亮二の心を確かに受け取った。彼女にとってはこのことが最も嬉しいことだった。
ジュエル 完
2014・7・27
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