第二章
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第二章
帰り道で二人は横に並んで歩いていた。そうしてそこで言葉を交えていた。空はもう暗くなろうとしていて青から赤、それから黒になろうとしていた。
その空の下においてであった。また霞の方から翼に声をかけてきた。
「ねえ」
「ねえだけじゃわからないけれど?」
「これでわからない?」
翼に顔を向けて言い返してきた。
「これで。わからないの?」
「それでわかる方が凄いよ」
翼は今の霞の言葉に対して口をひょっとこのようにさせたうえで返した。
「それだけで。ねえだけで」
「以心伝心じゃない」
しかし霞はそれでも言うのだった。
「違うの?ずっと一緒だから」
「一緒も何も一言でわかるわけないじゃない」
「わかって欲しいんだけれど」
「だからわかる方が凄いよ」
かなり無茶苦茶な霞の言葉に思わずその口をさらに尖らせる翼だった。
「一言で。わかる訳ないじゃない」
「それが残念なんだけれど」
「じゃあさ。聞くけれど」
翼の言葉はたまりかねたような感じになっていた。
「霞ちゃんはわかるの?僕が一言で何か言ったら」
「わかる訳ないじゃない」
しれっとして答える霞だった。
「それだけでわかったらエスパーよ」
「じゃあそれだと僕もエスパーになるよ」
翼の言うことももっともだった。
「違う?エスパーに」
「そういえばそうね」
「そういえばじゃなくて」
またむっとして言い返す翼だった。
「結局霞ちゃんもそれだけじゃわからないじゃない。わかる訳がないよ」
「まあ気にしないでいいわ」
「全く。いつもそんな調子なんだから」
口を尖らせて抗議する翼だった。
「強引っていうか何ていうか」
「まあまあ。それでね」
「で、何?」
「実はちょっと思ったのよ」
ここで顔を正面に向けて話す霞だった。
「ちょっとね。今こうして二人並んで歩いてるじゃない」
「いつものことじゃないの?」
「そのいつものことでね。何だかんだでこうして二人で歩いてると用心棒になってくれるのよね」
霞はこう彼に話すのだった。
「有り難いことにね」
「用心棒って僕が?」
「そうよ」
明るく笑って彼に話すのだった。
「じゃあ他に誰がいるのよ。今だって」
「ただ一緒にいるだけじゃない」
しかし翼にはその自覚はないのだった。しかも全くである。
「ただそれだけで?」
「それだけだけれど?」
霞の返事はしれっとしたものだった。
「それ以外に理由が必要なの?」
「あのさ、強いとか頼りになるとかじゃなくて」
普通用心棒に選ばれる理由である。
「まあとにかくよ。男の子が一緒にいてくれたら有り難いわ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけれどね」
今の言葉には少し嬉しかった翼であった。
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