第二部 文化祭
第56話 結末
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涙は
思い出の中輝いて…
きっと大事なものは一つだけ
絶対好きな気持ちだって
チャンスだよすぐに伝えなきゃでしょ
Cheer My Friend!
だって大切な二人だから
ずっとずっと応援するよ
運命のいたずら 乗り越えたから
きっともっとBe My Best Friend
歌い上げた里香は、明日奈に向けてぐっと親指を立てた。明日奈も同じような仕草をとる。
どうして里香はこんなにも強くいられるのか──これまでまりあは、何度そう思ってきたことだろう。しかし今日、ようやく分かった気がする。
里香は、初恋を諦めているのではない。現に、明日奈の歌を聴いて悲しい涙を流していた。それでも、ただ、心から親友の恋を応援しているのだ。強いとか弱いとか、そんなことは問題じゃない。
まりあは無意識のうちに、小さく呟く。
「……か、ず、と……」
それは、まりあの歌を初めて褒めてくれた人の名前。まりあをこんなにも明るい世界へ連れ出してくれた人。そして──まりあが初めて淡い恋心を抱いた相手。
「ふっ……ぇぐ……」
笑わなければ。今だけは、笑顔で明日奈と里香に労いの言葉を掛けなければ。お疲れ様って、言わなくちゃ。
そんな気持ちとは裏腹に、まりあの目から次々と感情が溢れ出し、雫となって流れていく。
「まりちゃん、どうしたの!?」
まりあの異変にいち早く気がついた明日奈が、慌てて駆け寄ってくる。
かつて、彼女をこんなにも至近距離で見たことがあっただろうか。
明日奈の煌めくはしばみ色の瞳は澄み渡っていて、気品や育ちのよさ、年頃の女の子らしさを自ずと感じさせた。
──勝てない。わたし、勝てないよ。
明日奈と和人が付き合っていることを知っても尚、和人が自分の方を少しでも振り向いてくれることを望んでしまう、汚い気持ち。明日奈の目を見ていると、そんな醜い心が洗われていくようで、余計に虚しくなっていく。
ふと顔を上げると、里香が苦い笑みを落としていた。恐らく、まりあの思考を全て察しているのだろう。里香は泣きじゃくったまりあの頭をぽんと撫でるように叩くと、明るい声で言った。
「まりあがあたしの歌にそんなに感動してくれるなんて感激だわ。あんた、歌上手いんだって? キリトから聞いてるわよ」
「キリト、が……?」
「ええ。あんたがいない間でもね、まりあって凄いんだぞーって、もう天才の域だよーってね」
「ほ、本当に……?」
驚いて和人を見ると、彼は照れくさそうに目をそらしていた。
──ああ、もう、泣いてしまいそう。
憧れの男の子が、自分のいない時にも褒めてくれている。まりあにとってこんなに嬉しいことはない。どんど
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