第136話 南陽郡太守襲撃
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の乱を平定した武闘派。劉表なら私との面倒事は回避することを選ぶはず。こんな悪手を安易に選ぶ奴は欲深い蔡瑁しかいない」
「孫家ということはないのでしょうか?」
「孫堅なら自ら出向いてお前を殺す。お前が表にでず城に篭っているというなら、お前を引きずり出すために小細工は弄すかもしれないが、こそこそと暗殺しようとはしない。そんな知恵も働かないだろう」
正宗は孫堅を旧知の仲のように言い切った。正宗は孫堅に出会ったことはないが、彼が収集した孫家の情報から孫堅の人物像はある程度把握していた。
「私ならこいつを利用して蔡瑁を脅迫して利益を得るが。南陽郡の太守は美羽だ。美羽、お前が決めなさい」
正宗は黙考して独白した後、目を開いて美羽を見て言った。正宗の表情は優しい兄の顔でなく、真剣な為政者の表情だった。
「即刻、処刑すべきかと」
美羽は正宗を見つめ迷わず言い切った。その瞳は淀みが一切無かった。人を命を奪うにも関わらず美羽が一切の迷いを感じさせないことに正宗は驚いていた。正宗は美羽のことを心優しく無垢なままと思っていたのかもしれない。しかし、美羽は南陽郡に来て以来、人の光と影を真近で見てきて、為政者として自らの信念に従い時に人の生死を選択する機会が多くあった。
「本気か?」
「本気です」
「理由を聞かせて貰えるか?」
「劉表殿と争うのは時期尚早です。世は乱れているとはいえ、未だ乱世ではございません。妾はこの一件を穏便に済ましたいと思います」
「そうか」
正宗は美羽の言葉を聞き黙考した後に目を見開いた。
「分かった」
正宗は女の口から指を出し立ち上がった。空いた左手で紙を取り出し右手の汚れを拭うと紙を無造作に道に捨てた。
「美羽、興が冷めた。食事はまたの機会にしよう。だが蔡瑁には返礼が必要だ。これ以上妙な考えを持たぬようにな」
正宗は美羽の方を向いた。
「兄様のご随意に」
正宗は美羽の返事を確認すると女の方を向いた。
「敵とはいえ主人への忠義は天晴れだ。遺言があれば聞いてやろう」
女は正宗の言葉に一瞬苦悩の表情を浮かべるが、直ぐに気丈な表情で正宗を見つめた。その様子を正宗は凝視して見つめていた。
「惜しいな。この私に仕官する気はないか? 仕官するというなら死一等を免じてやろう」
女は迷う態度を示すことなく正宗の申し出に答えることはなかった。女の表情から死を覚悟していることは直ぐに理解できた。
「そうか」
正宗は悲哀に満ちた表情を浮かべ短い言葉を口にすると抜き身の片手剣で女の首を刎ねた。
女の首は無機質な物体のように地面を転がった。正宗は懐から白布を取り出し女の首を丁寧に包んだ。
一週間後、蔡瑁の元には正宗と美羽を襲撃した十
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