第136話 南陽郡太守襲撃
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
聞く。お前の名前は?」
女は足の痛みを堪えながらも強い意志を秘めた両眼で正宗を睨み何も喋らなかった。正宗は感情の篭らない眼で彼女の手の甲に剣を突き立てるが、彼女は正宗を睨む視線に心が折れた気配は感じられなかった。
「これでも吐かないか」
正宗は女を一瞥して美羽に視線を向けた。美羽は正宗の行為に心を痛めている様子だった。正宗は美羽の表情を見て、表情を曇らせたたが直ぐに女の方を向いた。
「お前は賊ではないな」
正宗は意味深な表情で女を見た。
「お前達の主人は蔡瑁だ。蔡瑁も愚か者だ。この私が美羽を護衛している時を狙うとはな。蔡瑁のお陰で奴を殺す名分ができた。車騎将軍を暗殺しようと計画を企てては幾ら荊州の名族である蔡一族といえ看過できるものではない。朝敵として九族皆殺しにしてやる」
正宗は鋭い視線を女に向け唐突に言った。女の表情に一瞬動揺が走るのを正宗は見逃さなかった。
「図星か。妙に統率が取れていたいたが蔡一族の私兵であれば合点が行く。狙いは南陽郡太守・美羽であろう。誤算は美羽の側に私がいたことか。蔡瑁の計画は『太守暗殺』ではなく『車騎将軍暗殺』であったこととして利用させてもらうぞ」
正宗は確信に満ちた表情で女を見つめると女は視線を逸らす。美羽は状況が掴めない様子だった。
「兄様、どういうことでしょうか?」
「この女は自ら有益な情報を教えてくれたのだ。鎌をかけたのだが怪我の功名というものだ。だが可能性はあったがな。蔡瑁の実家である蔡一族は劉表の外戚に食い込み荊州での勢力を拡大している。劉表自身も蔡一族や黄一族を取り込み荊州の掌握を図っていこうとしている。そんな時にお前が南陽郡で善政を施し頭角を現せば、蔡一族はお前のことが邪魔に思うのは自然の成り行きだ。そして、今日の襲撃に至ったというところだろう」
「蔡瑁? 荊州の大豪族である蔡一族にございますか?」
正宗は頷くと女に視線を向ける。突然、彼は自分の指を女の口にねじ込んだ。女は正宗の指を噛むが正宗の指から血は一滴も流れない。正宗は指に気をまとっているのだろう。
「悪いが自決はさせんぞ。蔡瑁を脅迫して利益を得てるまでは生きて貰わないとな。暗殺者のお前は所詮捨て駒。だが、捨て駒なら捨て駒で利用方法がある」
「この者はいかような処分をお下しに為されるのでしょうか?」
美羽は正宗に尋ねてきた。正宗は美羽のことを興味深げに見つめてから口を開いた。
「美羽、お前ならどうする」
「兄様、劉表殿は私の命を狙っているのでしょうか?」
「劉表がそのような悪手を選ぶわけがないだろう。劉表は優れた政治家だ。博打のような勝負はしない。お前の暗殺に失敗すれば、私と対立することは目に見えている。同じ劉氏で朝廷の重臣同士、その上私は華北の黄巾
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ