第136話 南陽郡太守襲撃
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
訓練を受けている兵と見ていいだろう。城を出た時点では二人だった。美羽の配下の者達が気を効かせて護衛をしているのかと気にしなかったのだが、どうもそうではないらしい。今では殺気を放つ奴もいるしな」
正宗は歩きを止めることなく、前方を眺めながら美羽に言った。美羽も正宗を倣って前方を眺めながら歩く。彼女は気丈を装いながらも正宗の右手を強く握ってきた。正宗は美羽の不安を感じ取ったのか彼女の左手を握り返し優しい笑顔で彼女を眺めると、彼女の表情から少し緊張が和らいだ。
「そのような者達が何故?」
美羽は小さい声で正宗に言った。正宗は一瞬間を置き口を開いた。正宗に自分達の後を付いてくる者達に検討など無かった。一瞬、明命と亜莎とも考えたが彼女の気の質とは明らかに異なっていた。正宗は気を操ることができるため、人の発する気によってある程度人物を特定することができた。ただし、市井の民でなく修練を受けた武人という限定はつく。
「情報が少なすぎる。今の所『わからない』としかいえない。美羽に心当たりはないのだな?」
「ありません。ただ、南陽郡の経済発展に伴い犯罪者が増えていて、その取り締まりのために多少手荒なことをしています。それを恨みに思っている賊がいないとも限りません」
「そうか。賊にしては統制がとれ過ぎている。賊ではないだろう。ここで議論しても始まらない。相手に聞くとしよう」
正宗は淡々と言った。
「どうされるのですか?」
「美羽、この辺りで袋小路のような場所はないか? そこへ案内して欲しい」
「兄様、袋小路は危険です。相手が賊であった場合、妾達だけでは対応できないかもしれません。これから向かう酒家に頼りになる者がおります。このまま酒家に向かい、その者の助成を得ましょう」
美羽は正宗の提案に反対のようだった。
「必要ない。酒家に辿り着く前に襲撃してくるはずだ。この場所は襲撃に適している。現に八人の気配が後ろから姿を消した。私達を挟み撃ちをする腹積もりだろう」
正宗は窮地であるにも関わらず平然とした表情をしていた。対して美羽は正宗の言葉に不安そうな表情になった。正宗は美羽に「心配するな」と言うように彼女の頭を優しく撫でた。美羽は正宗の様子を見て安堵した表情を浮かべていた。
「美羽、不安がることなどない。馬鹿な奴らだ。この狭路で私に挑むとはな」
正宗は呆れ果てたように空を眺める。空には相変わらず雲一つ無かった。
しばらくして、黒装束を怪しい一団が正宗と美羽の進行方向と来た道を塞ぐように現れた。その人数は十八人。前方に八人。後方に十人。完全に袋の鼠だ。正宗は美羽を自分の近くに引き寄せ、前と後を交互に見て賊を観察した。
「聞いても無駄だと思うが、お前たちは何者だ。この私が車騎将軍・劉
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ