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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第136話 南陽郡太守襲撃
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 正宗は美羽との約束通り彼女と一緒に食事に出かけることにした。共の者は居らず、正宗と美羽の二人だけ。
 空には雲一つなく晴れ渡り、太陽の日差しも強くなく散歩日和。
 二人が城下に出て表通りに来ると昼時ということもあり、彼方此方から良い匂いが漂ってきていた。彼らは表通りを抜け市街の外れに向かっていく、その先にあるのは道が迷路のように入り組んでいる旧市街だ。この辺りは中流より以下の庶民が住んでいる。また、空き家が多いために治安もあまりよろしくない。普段は美羽一人では行くことは周囲の者達が許さないのだが、正宗が一緒ということで今回は特別に許しを得ることができたのだった。城を出る時、心配そうな明命と亜莎が一緒についてくると言っていたが美羽が拒否したため正宗と二人で来ることになった。
 正宗は浅葱色の漢服に身を包み、腰に片手剣を携帯し、彼の得物である豪槍「双天戟」は自分の肩を支えに軽々と担いでいた。
 美羽は出会った時と同じ胡服に身を包み満面の笑みを浮かべ、正宗の手を取り道中を先導していた。
 傍目から二人の姿は仲の良い兄妹に見えていることだろう。
 道中出会う者達は美羽を確認すると腰を低くし声を掛けてきた。日頃から美羽は頻繁に市井へ顔を出しているのだろう。また、声を掛けてくる者達の穏やかな表情から美羽と城下の民との距離が近いことがよくわかった。正宗は美羽が民と歓談する姿を横目で見ながら嬉しそうな表情だった。


「兄様! もう少し先ですよ」
「美羽、そう急がなくてもいいだろ」
「兄様に早く食べさせたいのです」
「そうか。それは楽しみだな」

 正宗は美羽に手を引っ張られ街路から逸れた迷路のような小道を急ぎ足で進んでいた。この道を常日頃利用しているのか美羽は立ち止まることなく奥へ奥へと向かっていた。正宗は美羽のはしゃぐ姿を優しい表情で眺めていたが、人気のない場所に差し掛かったところで彼の表情に険しさが現れた。

「兄様?」

 美羽は正宗の変化を感じ取り声をかけた。正宗は美羽を向くことなく、美羽の左手を握ると口をおもむろに開いた。

「美羽、後ろを振り向くな。何者かにつけられている。心当たりはあるか?」

 正宗は唐突に美羽だけに聞こえる程の声音で囁いた。美羽は正宗の言葉に一瞬驚いた表情をするも直ぐに平然を装っていた。

「誠ですか?」

 美羽は正宗の手を握りながら横に並ぶと正宗と同じように小さな声で返事した。
 正宗が彼女へ視線を向けると、彼女の表情は少し緊張していた。正宗は彼女の頭を撫でて緊張を解そうとする。正宗の表情には一片の焦りも感じられなかった。戦場に長く身を置いていた彼にとって、この程度のことで動ずることなど無かったのだろう。

「ああ。人数は十七、いや十八人。周囲の気配から察する移動速度からして
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