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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十五話 戦争への道
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圧倒的に有利だと皆が言っている。あっという間に戦争は終わってしまうのではないかと。いささか物足りないのではないかね?」
伯が覗き込むように俺を見てきた。思わず苦笑が漏れた。
「戦力的に有利であっても楽に勝てる戦いなどは有りません。特に反乱軍は負ければ国が亡びかねません。おそらく、死にもの狂いで向かってくるでしょう。そういう敵がどれ程恐ろしいかは昨年の内乱で嫌というほど思い知りました。油断は出来ません」
伯は興味深げに聞いていたがヒルダは表情を消して頷いていた。彼女は分かっている、キフォイザー星域の会戦で勝てたのはヒルデスハイム伯が勝利に逸った所為だった。あれが無ければ勝てたかどうか……。敗ければ辺境星域は貴族連合の手に落ちていただろう。
そしてリッテンハイム侯の抵抗、今でもうなされる程の悪夢を見る勝利、あれを勝利というのなら勝利とは苦痛以外の何物でも無い。それ以上の苦痛が有るのだろうか? 有るとすればそれは敗北する事だろう。楽に勝てる戦争などというものは無いのだ。その事はヴァレンシュタイン司令長官も理解している。ガイエスブルクの決戦では自らを囮にするほどの危険を冒さなければ勝利を得られなかったのだから。
寄せ集めと言われ圧勝するだろうと思った貴族連合軍でさえそれほどの苦戦を強いられた。そして反乱軍は貴族連合軍とは違う、彼らは軍人、プロの戦闘集団なのだ。ビュコック、ウランフ、ヤン・ウェンリーなど一筋縄ではいかない男達が揃っている。油断など出来る事ではない。
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