四話 わたしたちのすきないろ
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赤い少女は青い少女のために羽ばたいて、
青い少女は赤い少女のために羽ばたいている。
二人で一人で、仲が睦まじいのは君たちの方だ。
でもきっと、加賀からは私と赤城が、赤城からは私と加賀が、そう見えているのだろう。もしそうなら、私たちは比翼の鳥でありながら、おしどり夫婦だ――なんて思う。
これから、徐々に秋の影が見えてくる。何度繰り返してもそれは私たちのように変わらないのだろうと思う。窓の前に立つと、眼下には非番の艦娘たちが鬼ごっこをしている様子が広がっていた。この景色もきっと、変わらないのだろう。それは停滞ではなく、変わらないことを選択するという成長なのだ。
「『色は思案の外』って言葉を知っているか」
私は誰もいない司令室で、誰に言うでもなく語りかけた。
「愛情にはどんな常識も通じないって意味、らしい。私は最近、身を以って知ったよ」
返事をする者はいない。私は窓に語りかけているので、当然だ。司令官室には私の他に誰もいない。
「私は、妻たちのことをずっと考えていたつもりだけれど、確かに、赤色も青色も、思案の外のことばかりしてくれた」
そして、私自身も、二人の妻を持つという常識外れの結論を出したのだ。
妻たちがしていたように、私は空に向けて指輪をかざしてみた。どうだ、いい指輪だろう。妻たちとお揃いなんだ――と私は空に向かって自慢をする。
空は返事こそしなかったが、光を遮っていた雲を流して、私を強い陽光で照らしてくれる。
意匠の凝った小さなルビーとダイアとサファイアが並んだ指輪がそれぞれの色を反射した。
それは、私たちの好きな色だった。
(了)
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