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比翼連理の赤と青と
三話 赤い赤色
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ることもできたのに」
 今思えば、加賀はあの時、赤城の決意を試したのだと思う。赤城が尻込みをするようなら、加賀がそのままユビワを独占することもできた。彼女は妻だった期間、どれだけ「私を選んで」と言いたかったことだろう。彼女は今まで、どれだけ、色々なことを我慢してきたのだろう!すべては、私があの時、どちらかを選んでさえいれば起きなかったことだった。
「それで、どうするんですか、提督」
 ふと気付くと、赤城が机のすぐ真向かいまで近付いていた。私は何を問われているのかわからず、彼女の二の句を待つ。
「ええっ、ここまで待ったのに、まだ答えを出してないんですか?」
 加賀への態度だろうか。それとも……それとも、なんだというのだろう。私は、本当に、何をどうすればいいのだろう。
 ああすればよかった、とか。
 こうすればよかった、とか。
 過去のことばかり、思ってしまう。私は本当に、何もできないんだな、と不甲斐なく思う。
「……ずっと訊いていたじゃないですか。どっちとケッコンするんですか? って」
 赤城の『二の句』に驚く。それは、本気で言っているのだろうか。
「……見ていたならわかるだろう。もう、加賀は、ケッコンできないんだよ。そもそも、そのユビワは赤城からは外れないんだし――赤城とケッコンするしか」
 ないだろう、と言い終わる前に、ガァンと机が鳴った。見ると、赤城が叩いたらしい。ぶるぶると拳が打ち震えていた。
「ふざけないでください!私がそんな方法で、提督を手に入れて、嬉しいわけないでしょう!与えられたものをハイそうですかと簡単に受け取るほど、私は――意地汚くありません!」
 赤城が怒ったのを初めて見た。肩で息をしている。
「ちょっと、加賀さんを呼んできます」
 そう言って、彼女は踵を返した。叩かれた机は、歪んでいた。

 ◆

「……もう、話なら終わったはずだけれど」
 加賀が所在なさげに立っていた。赤城は椅子に座っている私の上にさらに座っていて、少し重い。
「今は私が妻ですけど、次の一週間は加賀さんが妻になるんですよね? そう、約束しましたよね?」
 赤城が口を開く。加賀は一度だけ私に目配せをして、
「提督から聞いてないのかしら。私はもうケッコンカッコカリができないの。だから『今は』じゃなく……『ずっと』赤城さん、が、妻、よ」
 言い終わる前に声が震えていた。加賀は潤んだ目を隠すためか、そっと下を向いた。そして、一呼吸置いてから、告げる。
「それに、次の一週間、私が妻になると約束した覚えはないわ。私は『一週間、私にユビワを着けさせてもらって、次の一週間は赤城さんが着ける』ということしか言ってないもの。その先については、私は何も約束していません」
 加賀は二週間前からこの事態を見越して、予防線を張っていたのだろう
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