二話 青い危険色
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で、何も言えなくなってしまった。加賀とは、明日からどう付き合えばいいのだろうか――。
夜も遅いので、続きはまた今度、と諌めると、どんな続きをしてくれるんですか、とからかう赤城だった。彼女は攻めてくるタイプらしい。私は寝る準備をするから、と赤城を追い出した。
鎮守府の敷地内にある風呂に寄る途中、ドックの前を通ると灯りがついていた。この時間までドックを使うような怪我を負った艦娘はいないはずである。新造艦の建造命令も出した覚えはない。
私がそっとドックに近寄ると、否、近寄る前に、中からは大きな嗚咽が聞こえた。誰の声かわからなくなってしまうくらいの痛切な――言葉を抑えても、抑えられない感情の奔流であると一聴してわかるような――青い、青い、泣き声だった。私でなければ、きっと声の主に気付かなかっただろう。彼女は子どもがそうするように、鼻を啜り、たまに咳き込んで、辛そうに、痛そうに、泣いている。
私は、その場を足音を立てず去った。正直を言えば、今すぐ中に入って彼女を抱き締めたい。お前は泣かなくてもいいのだと、そしてもうお前を泣かせはしないと、抱き締めて言ってやりたい。しかし、私はどんな面を下げて逢えばいいのか。私が彼女のことを本当に想うなら、ここで去ることが最良なのだ――そう自分に言い聞かせて、鎮守府に引き返して床に入る。風呂に入る気分ではなかった。身体を清めたところで、心にこびりついた彼女の嗚咽までは落とせる気がしない。
赤城と結ばれた日であるというのに、私の心の中は青に染まっていた。
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