二話 青い危険色
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、加賀が辛そうにしているのを見ると、私まで胸が張り裂けそうになる。
「……赤城からは、加賀を好きでいなさい、と釘を刺されたよ」
加賀が何を考えているかは私にはわからないが、しかし、妻を不安にさせることが、果たして正しいと言えるだろうか。そう思っての発言だった。
「そう」
加賀さんはそう言って、何かを決心したように唇を強く結んだ。
もし、彼女が引き返せたとしたら、ここが限界だったのだと思う。私が何も言わなかったら、加賀は自分のしようとしていることを持ち前の冷静さを以ってして止めたかもしれない。ただし、それは赤城を裏切ることになるから、加賀はそんなことはしないだろうが――それでも、引き返せる可能性はあった。いや、何を言っても意味がない。私は、自分に責任があると思いたいのだ。
そうでなければ。
そうでなければ、彼女のひたむきさが正しくないと認めるようなものだからだ。
◆
あの蒸し暑い日から一週間が経った。気候は一週間では変わらず、加賀も秘書艦の仕事を変わらない様子で終わらせて、いつも通り私にそっと身体を預けてきた。肩越しに私と目を合わせる格好になる。今の加賀の目には、誘引の香りが満ちていた。私はそんな愛しい彼女を見て、我慢できず、そっと口をつける。加賀は接吻の瞬間、少しだけ身体を強張らせたかと思うと、すぐに唇を離した。
「……ありがとう、ございます」
もう少し唇を重ねていたら、私はきっと彼女の差し出したものをすべて奪ってしまっていただろうと思った。加賀もすべてを差し出したに違いなかった。
加賀が妻でなくなる時間が近づいてくる。私は彼女に、ユビワを外しても加賀が好きだよ、と口にした。彼女はぐっと何かと飲み込んで、一呼吸おいてから、
「赤城さんのことをよろしくお願いします。私のことも、どうか嫌いにならないで、ください」
そう言って、彼女は司令官室を出た。私が加賀を嫌いになるはずなんてない、という言葉を発した頃には、その言葉を聞く者はいなかった。
おおよそ一時間後、赤城が司令官室に入ってきた。
「提督、今日は私と結ばれる日ですね」
彼女は目を輝かせていた。加賀からケッコンユビワを譲ってもらったのだという。
「これからは二週間ごとに、好きな人と結ばれるんですね……そう考えると、幸せ、かも」
そう言って、彼女はケッコンユビワを私に手渡した。加賀は自分で着けてしまったけれど、私は提督に填めてもらいたいです、と珍しく恥じらっている赤城の手を取り、左手の薬指にそっと填める。
「確かに、身体が軽くなったように感じますね」
赤城が軽く身体を動かす。こうしていると、小さな少女がはしゃいでいるようだった。
「そして、ちょっと恥ずかしいです」
私は加賀のことが気になったけれど、赤城が私に抱きついてきたの
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