一話 白い難色
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ああー! 加賀さん! それはひどいです! なしです! 外してください!」
赤城が加賀に食ってかかる(赤城に『食って』かかられるなんて、ぞっとしない話である)。目の前で見ていた私も呆然としてしまった。私にも『加賀に限って、そういう横取りをするような真似はするまい』という思いはあったので、その行動に驚いてしまった。
「案外、軽いのね。流石に気分が高揚します」
一方、どこ吹く風と加賀はきらきらとしていた。鈍色だったユビワもきらきらと銀色に輝き始める。
「加賀さん! 怒りますよ!」
赤城がぐい、と左手に組み付くが、加賀は軽くそれをいなして部屋の隅に身体を逃がした。
「落ち着いて。赤城さん」
加賀はきり、とした表情で赤城に右手で待ったをかける。左手だとユビワを見た赤城にまた組み付かれるからだろう。こういう抜け目ないところは流石、加賀である。
「私に、いい考えがあるの」
コンボイかよ。
「そ……それは信じてもいいの?」
そして赤城にも通じるのかよ。
「一週間、私にユビワを着けさせて頂戴。そして、次の一週間は赤城さん、あなたが着けるの」
それを聞いた赤城は顔を綻ばせて流石加賀さんね、と手を合わせて喜んでいた。その時、わずかに加賀の顔が曇ったのを、私は見逃さなかった。
「赤城さんにその覚悟があればの話だけれど」
赤城は赤城で、胸を張って自信満々に言う。
「加賀さんにできて、私にできない覚悟はありませんよ」
そのやり取りに、私は不安を覚える。このことで二人の仲に亀裂が生じはしないだろうか。しかし、この二人に限って、まさか――。私が考えを巡らしていると、加賀がこちらを向いた。
「提督、勝手なことをしてごめんなさい。順序がちぐはぐになったけれど――」
加賀はこちらを向いて頭を下げた後、
「私のことを、嫌いでなければ、ええと、その……妻にしてほしいの、だけれど」
そう言って、相好を崩したのであった。
色々と思うところはあるが、好きな人からはにかまれながらそう言われて断れる人間はいない。
――こちらこそ、お願いします。
私はどうしていいかわからず、とりあえず彼女に向けて手を伸ばす。加賀はそれを見て、同じようにおずおずと手を差し出した。私たちは何故か握手をしていた。赤城はけらけらと笑いながら「二人とも、うぶで、見ているこっちが恥ずかしくなっちゃいます」と茶化していた。
私の顔が熱を持っていたので、手にした帽子で顔を仰ぐ。視界に帽子の白がぱたぱたとはためいた。言うまでもないが白帽を振っているのは降参の旗印ではなく、冷気を顔に当てるためだ。こんな形で熱中症の二人目にはなりたくはない。
「二人とも。先に言っておくけど、ユビワを取り合っていがみ合うなんてことは絶対にしないように」
と、私は冷静な振りをするため
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