第十四章 水都市の聖女
第二話 八極
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これ考えても答えなど出ようはずがない。
出口のない袋小路にハマるよりも、今は何よりしなければならないことがある。
そう、一刻も早くハルケギニアへ―――ルイズたちの元まで戻らなければならない。
「すまないがサーシャ。俺は一刻も早く元いた場所へ戻らなくてはいけないのだが、それでまずは何より情報が欲しい。この辺りに町が何かないだろうか?」
「さっきも言った通りわたしもあなたと同じく迷子なのよ。残念ながらわたしもここが何処なのか見当もつかないの」
「それは……すまなかったな」
「別にいいわよ。わたしも暇な身の上じゃないし。さっさと帰りたいんだけど……残念ながら迎えが来るのに時間は掛かるでしょうね」
ため息と共に肩を落とすサーシャに、士郎はそう言えばと問いかけた。
「サーシャはどうしてこんなところにいるんだ? 迷子と言っていたが、この辺りの町があるかも分からないとは、ここに来る前に町とかに寄らなかったのか?」
「わたしは歩いてきたわけじゃないのよ。あの蛮人が……そう、あいつが―――ッ!!」
ギリリッと歯を剥き出しにして噛み締めるサーシャ。
光に透ける薄い葉のような翠の瞳が今は濃く燃え上がり、長い睫毛が震えている。少し垂れ気味の目元が鋭い眼付きを幾分か和らげていたのだが、今は狂犬もかくやとばかりの鋭さを見せていた。
士郎はエルフの女性は初めて見たが、どんな種族であっても、女の怒りは恐ろしいものだとその時悟った。
経験からこのまま見ていると、厄介なとばっちりが来ることを知っていた士郎は、何を思い出しているのか気炎を吐くサーシャから目を逸らし空を見上げた。空は先程と変わらず青く澄み渡り。キラキラと輝く太陽と、うっすらと浮かび上がる二つの月。
そして―――。
「これは、一雨来そうだな」
―――徐々に大きくなってくる暗い雲。
青が黒に塗りつぶされると、ポツポツと雨が空から降り始めた。
「―――不思議ね」
「ん? 何がだ?」
降り出した雨を避けるため、木陰に隠れていたサーシャがポツリと溢した言葉を士郎が拾う。サーシャは士郎に顔を向けることなく枝葉の隙間から落ちてくる雨粒を見つめながら口を開いた。
「……気付いてたでしょ。最初あなたに会った時、わたしが襲いかかろうとしてたこと」
「まあ、確かに隙を見せれば咬み殺されそうだったな」
「女に対して咬み殺されそうは酷いんじゃない?」
ふふっ、と小さな笑い声を上げるサーシャに、士郎は苦笑を返す。
「確かにな、で、結局何が不思議なんだ?」
「分からない? まだあれからさほど時間が経っていないのに……わたし、今全然あなたを警戒していないのよ」
「……確かに」
「それだけじゃなくて……わ
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