第十四章 水都市の聖女
第二話 八極
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の視線が向けられるのは、美貌の横にある耳。明らかに人間とは違う長い耳。
「エルフ、だと……」
「あら、エルフを知ってるのねあなた。ふ〜ん……蛮人にしては珍しいわね」
「珍しい?」
フードから出した頭を軽く振って気持ちよさそうに目を細めていた女は、士郎の言葉に軽く目を見開いて軽い驚きを示した。
「わたしを見てエルフだなんて言ったのはあなたが初めてよ。今まで会った蛮人は皆わたしを見たら珍しい珍しいとしか言わないんだもの」
「そう、か。俺は衛宮士郎。出来れば蛮人ではなく名前で読んでくれ」
「そう、なら―――シロウと呼ばせてもらうわね。わたしはサーシャよ」
士郎は一つ頷くと、サーシャと名乗るエルフの女へと疑問を投げかけた。
「ああ、よろしくサーシャ。で、早速一つ聞きたいことがあるんだが、ここが何処か知っているか? ここはハルケギニアのどの辺りなんだ?」
「ハルケギニア? さあ? 残念ながらわたしもここが何処か知らないのよ。わたしもあなたと同じく迷子なのよ。っと、言うか、“ハルケギニア”って―――なにそれ?」
「……は?」
顎に細い白い指先を当てながら小首を傾げるサーシャを前に、士郎は眉根に皺を寄せた。
「“ハルケギニア”を知らないのか?」
空に月が二つあり、そして以前見たビダーシャルと名乗るエルフと同じエルフが目の前にいる。ならばここは自分が元いた世界でも、ましてや全く知らない異世界でもなく、ルイズたちの世界であるはず。なのに、このサーシャと名乗るエルフは“ハルケギニア”を知らないと言う。先程サーシャはこの辺りの人間はエルフを知らないと言っていた。ハルケギニアでエルフを知らない者はいないと聞く。なら、ここはもしかすると、ハルケギニアから遠く離れた別の場所なのかもしれない。そう例えば―――。
「まさか、ここは“ロバ・アル・カリイエ”なのか?」
「……残念だけどそれも聞いたことがないわね。わたしもこの辺りのことはよく知らないのよ。わたしは元々“サハラ”というところから来たんだけど……そう言えばあいつが“イグジスタンセア”とか言ってたわね」
「“イグジスタンセア”?」
今度は士郎が聞き覚えのない単語に首を傾げる番であった。
しかし、サーシャがもう一つ口にした“サハラ”と言う言葉には聞き覚えがある。
確か、エルフが住む土地は“サハラ”と呼ばれていた筈。ならば、やはりここはルイズたちの世界である。
しかし、それならば一つ疑問が生まれる。
この周囲に漂う魔力は一体何なのか?
まるで二つの異なる絵の具を混ぜ合わせたかのように、奇妙な歪のようなものを感じさせる魔力は……。
「―――まあ、考えても仕方がないか」
自分のような魔術師としては三流の者が、あれ
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