第十四章 水都市の聖女
第二話 八極
[1/12]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「―――……ぁ?」
瞼越しに伝わる日の光による刺激に、沈んでいた意識が浮かび上がっていく。未だハッキリとはしない思考の中、視界から来る刺激を弱めようと、無意識に伸びた手が両の目を覆う。日の光が手に遮られて出来た影により、目に伝わる刺激が弱まると、瞼がゆっくりと開き始めた。
「……どういう、ことだ?」
身体を起こし周囲を見渡した士郎は、目に飛び込んできた見渡す限りの草原に疑問の声を上げた。
疑問は自分が見知らぬ場所にいる事―――ではなく、見知った場所にいないこと、である。
勿論、今目にしている景色自体に見覚えはない。しかし、気配というべきか、言葉には出来ないが今自分がいるのが元の自分がいた世界でも、ルイズたちがいる世界でもないことが感じられる。
気配―――等という曖昧なものではなければ、そう、この世界に満ちる魔力が違う。
元の世界の緩やかな川のようなものでもなく、ルイズたちがいる世界のように、溢れるばかりの大海のようなものでもない―――まるで、渦を巻く濁った湖のような……。
既に思考は回復しており、士郎は目が覚める前に何が起きたのかは思い出している。
そう、あの時―――ジュリオに罠に嵌められ、落とし穴に落ちていく先に見たものは、“世界扉”だった。
だからこそ、疑問に思う。
あれが“世界扉”であるのならば、自分が今いる場所は元の自分がいた世界のはず。しかし、今自分がいるここは、元の世界でもルイズたちがいる世界でもない。
もしや、そのどちらでもない世界に飛ばされた?
世界移動という“魔法”と言っても差し支えない規格外である。何らかの失敗かそれとも故意によるものか、別の世界に飛ばされた可能性がある。
だとすると、かなり厄介な事になった。
立ち塞がる現実を前に、士郎は全身が鉛にでもなったかのような疲労が感じられたが、頭を一振りすると気を入れ替えた。
「結論を出すにはまだ早すぎるか」
碌に情報収集してもおらず、結論を出すにはまだ早いと思い直した士郎は、膝に力を込め立ち上がった。
どうやら自分は草原の中にある小高い丘の上で寝ていたようだと周りを再度見渡して頷いた士郎は、傍に立つ木に手をつき空を見上げた。
「……っ」
士郎の視界に飛び込んできたのは、枝葉に裂かれて伸びる光の向こうに見えるもの。
「―――月が二つ、だと」
青空にうっすらと浮かび上がる二つの月。
つまり、
「まさか―――ハルケギニア、なのか?」
なら、この世界に満ちる魔力は一体何だというのか?
この、混沌としか言い様のない魔力は……それとも、ここだけ特別なだけなのか?
士郎が答えの出ない思考に没頭する―――その時。
「…
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ