第九章
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出しその古傷の痛みを確かめる。確かめずにはいられない傷だ。思い出さない日はない。それは決して口に出さないだけで。
その傷の痛みを感じながらまた剣人の言葉を思い出すのだった。そしてその目も。
「それでも。愛している」
次に思い出したのは。
「そしてあの子もかつて」
自分と同じような目に遭っている。程度の差こそあれだ。
「受けてきているのね。同じことを」
自身のことばかりを考えていた。これまでは。しかしそれが彼も同じだとわかって。それが親近感を余計に増すことになっていた。
そのうえで今考えるのだった。どうするべきかを。古傷はさらに痛む。しかしその古傷を感じながら。剣人の言葉と顔も思い出し。そうして考えを巡らせていくのだった。
やがてそれは一つの考えに辿り着こうとしていた。ふとテーブルの上の花に目をやる。自分でそこにさしている椿の花だ。赤と白の二色の椿がそこにある。
「椿・・・・・・」
その椿を見てその考えが一つに辿り着いたのだった。
「答えは。これで」
その椿を見つつ呟いた言葉だった。今はただその椿を見ている。だが時間はそうして椿を見ているだけで過ぎるものではなく。遂にその打ち上げの日となったのだった。
圭はまず撮影の現場に一番に来た。そのうえで剣人を待つ。彼はそこで白い服に胸に赤い椿を飾っている彼女を見るのだった。
「羽田さん、おはようございます」
「これが答えよ」
圭は挨拶を返さずにこう彼に告げるのだった。
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