妖精亭-フェアリーズハウス- part4/ルイズ頑張る
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まり始めてるんだから」
「え、あ、ああ…そっちか…」
自分は今なんて馬鹿なことを考えていたのだろう。額の汗をどこからか出したハンカチで拭きながらサイトは己の煩悩を反省した。サイトとしては、唯一の同郷の女の子の面倒は着きっきりで見ておきたかった。けど、自分たちは仕事をもらっている身だから、いつまでもこうしてはいられない。
「サイトさんったら…お望みだったらいつでも着て差し上げるのに…」
一方でシエスタは両手で頬を包み込んでクネクネしている。ハルナはというと、毛布に顔を画しながら、サイトを白い目で睨んでいた。
「…平賀君のエッチ」
今のサイトの馬鹿らしい発言に、フォローのしようがないほど軽蔑したようだ。ショックを受け肩を落としながらも、サイトは仕事に戻って行ったのだった。
一見平和なひと時を過ごしているとも見えた。しかし、その裏で…すでにこの世界を狙う者たちの意思が、トリスタニアの街に広がり始めていた。
「はぁ…はぁ…!!」
ある日の夜中、10代半ばに見受けられる可憐な栗毛の少女が、息を弾ませながら必死にチクトンネ街の夜道を走り続けていた。彼女は追われていた、今時分を追い続けている影から一秒でも逃れるために。少女はとにかく走り続けた。自分でも驚くほど長い時間走り続けた。立ち止まって一息大きな息を吐き、後ろをふと振り返る。後ろには誰もいない。よかった…自分は逃げ延びることができたのだ。少女は安心して胸をなでおろす。しかし、それは誤った認識だった。もう一度進行方向へと振り返ると、彼女の安心の笑みは一気に恐怖の顔へと一変した。
「きゃあああああ!!」
腰を抜かした彼女はその場に尻をついてしまい、立つこともできない。目の前にいたのは、最近噂になっていたチュレンヌの雇った少年だった。彼は少女の腕を乱暴につかむ。
「いや!離して!!離してよ!!」
少女は必死にもがいてその手を振りほどこうとするが、少年の力はとても人間のそれと思わせなかった。まるで自分の手首が鉄製の手錠にかけられたかのような圧迫感があった。少年は少女の抵抗をうっとおしく思ったのか、少女の腹を殴りつけて彼女の意識を奪い去った。別に命を奪うつもりではなかったようだ。でも、それでも少女が嫌がるほどのことが目的だったのは確かだ。少年は少女を担ぐと、夜の街の中へと消えて行った。
それは、偶然にも街を警戒していた銃士隊の女性隊員たちに目撃された。彼女たちは今の影を逃がすまいと追っていく。
謎の影は思った以上にすばしっこく、次から次へと屋根を飛び移っている。女一人を担いだままでだ。銃士隊は、メイジ殺しともうたわれているアニエスによって犯罪者メイジとの戦闘に備えた訓練も行っているため、相手が魔法を使っているか否かは見るだけでわかるようになっている。今の少年は、魔法を使っていなかった。
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