その雨が恵みになると信じて
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は真っ直ぐに前を睨みつけた。
《大丈夫だよ》
そんな時だった―――――懐かしい声が、耳に飛び込んできたのは。
2年前を最後に、聞く事が出来なくなった声だった。いつも近くにいて、それでも突っぱねる事しか出来なかった優しさだった。
後ろから抱きしめられるような、そんな温かさを感じる。顔に伸びた熱が、ティアの涙を拭った。
《信じて。みんなと、自分を。まだ終わりじゃない…まだ、負けてないよ》
懐かしい声に縋りたくなる心を堪え、こくんと頷く。柔らかな温かさは笑うように強くなり、悔しさの全てが安堵へと変わるのを感じる。
何の根拠もないはずなのに、この声で大丈夫だと言われると本当に大丈夫な気がしてしまうから不思議だ。何度も励まされた言葉に泣きそうになるのを抑え、しっかりと前を見据える。
そして、ゆっくりと口角を上げて、呟いた。絶対の自信と、少しの強がりを込めて。
「……やってやろうじゃない」
眩いまでの青が、ティアの両腕を包み込むのを見た。
そこからリボンのように伸びた青色はティアの一撃に巻き込まれるように回転し、一気に威力を倍増する―――――!
「なっ……」
シャロンの呟きが、騒音の中でハッキリと聞こえた。あの声の驚きから覚めたナツ達は、呆然と言葉を失う。
先ほどまでの光景が嘘のように、ティアはどんどん威力を増していく。どこかに魔力を隠し持っていたかのようだ。伸びる青いリボンのようなそれは尽きる事を知らず、一気にシャロンの光を呑み込んでいく。
「…おいルー、あれって……」
「うん……間違いないよ、あれは…あの人の……」
いつだって明るくて前向きだった彼女。そんな彼女が独自に編み出した魔法を、彼等は知っていた。
不思議そうにこちらを見るルーシィに答えようとして、何故か言葉が出て来ない。口を開いては閉じてを繰り返すルーの代わりに、エルザが口を開いた。
「あれはアイツの大雨……それに…対象に全魔力を注ぐあの魔法は……」
エルザが何かを続けようとした。
が、それは当然のように騒音に掻き消され、ルーシィの耳に届かない。気になってもう1度聞こうとして――――――意識を、引っ張られる。
「あああああああああああああっ!」
それは、絶叫。
完全に呑み込まれた光同様に、シャロンがティアの水に呑み込まれる。しばらくして吐き出されるように飛び出たシャロンは攻撃を仕掛けようとするが、遅い。
「!」
持ち前のスピードで一気に駆け、水の翼とは別の―――――鱗に覆われた竜の翼をその背中か
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