その雨が恵みになると信じて
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全身が冷えきった。
感情を押し殺すのは昔からの得意分野で、今ではそれしか出来ない。だから恐怖の1つや2つくらい、なんて事はない。
(……本当に)
ふ、と口元を緩める。
その笑みが何を表すのかはティア本人にさえも解らず、ただ思うままに、呟けない言葉を脳内で響かせた。
(大嫌いだ)
――――――刹那。
「大海ノ女神!」
「グランドクロス!」
水と光。
2つの旋風が、真正面からぶつかり合った。
その衝撃は、こちらにまで伝わる。
「う、わっ!?」
「主!」
とんでもない強風に煽られたかのようだった。
ぐらりと傾いたクロスをライアーが支える。周りに目を向けてみれば、他のメンバーも衝撃に耐えているようだ。先ほどのココロとポワソンが巻き起こした風が些細なものに思えるほどの衝撃に、クロスはハッとしたように本宅を見る。
「今のは……」
「くっ」
「何事だ!?」
クロス達よりも本宅に近い場所にいるヴィーテルシア達もまた、衝撃に耐えていた。
吹き飛ばされそうな体はパラゴーネが重力操作を使う事で固定している。塔の陰でエストを守るミラは突然の事に対応出来なかったようだが、もちろんそこにも重力操作の効果は伸びていた。
一気にこれだけの人数を固定している為か、パラゴーネの表情には疲労が見える。
「かなりの魔力が一気に……!パラゴーネさん、大丈夫ですか!?」
「寧静だ!この頻数っ…」
アランに叫び返すパラゴーネだが、彼女とて疲れはある。魔力消費はもちろんの事、傷が塞がれているとはいえ脇腹にだってまだ痛みはあるのだ。
衝撃に耐える術を持たないデバイス・アームズ達は吹き飛び、それを避けながらヴィーテルシアは呟く。
「―――――」
その呟きは、騒音に掻き消された。
「く、くくっ……あはははははははっ!」
また別の場所では、堪えきれない笑い声が響いていた。
魔水晶映像を眺めるシグリットは目に浮かんだ涙を拭うと、それでもまだ笑い足りないのかクスクスと声を零す。
「もう終わりね…思う存分楽しませてもらったわ、妖精の尻尾」
そう言って、くるりと背を向ける。
幾つもの魔水晶映像が浮かぶ部屋で、シグリットは愛おしそうにテーブルの上の写真立てを撫でた。
シンプルなデザインのそれに収まる、1枚の写真。写真嫌いの娘が率先して撮る側に回り、夫と息子と一緒に取った家族写真を見つめる。
笑う
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