その雨が恵みになると信じて
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両手に魔力が集まっていくのを感じながら、ティアは考える。
どうやってナツに詠唱が終わった事を伝えるか、実は決めていないのだ。いつも使うような魔法の詠唱なら、一言二言ぐらい挿んでも問題なく使える。が、これのように奥の手に等しい魔法の場合、一言でも言葉を入れると集中が途切れてしまうのだ。
だから、ティアはナツに合図する事が出来ない。こんな所で躓くとは思っていなかった為、対応に遅れる。
どうしようかと考えを巡らせるティアの横を緋色と紅蓮が駆けていったのに気づいたのは、2人の一撃がシャロンに叩き込まれた時だった。
「はあっ!」
「うぐっ…」
気合の声と低い呻き声に顔を上げれば、“悠遠の衣”を纏うエルザと炎のダガーを投げつけるアルカが視界に映る。エルザの薙刀が叩き込む一撃の間を縫うようにダガーがシャロンを傷つけ、それを確認するよりも早くアルカは更に炎をダガー型にし、投げていく。
「もう十分そうだぜナツ!さっさと引っ込むか!」
「おう!」
ニッと笑ってティアに目を向けたアルカに頷き、ナツは後方へと跳ぶ。すぐに視界から3人の姿が消え、いるのはシャロンただ1人。
操る属性が違えど、アルカも元素魔法の使い手だ。詠唱が終わっているかどうかぐらい、感覚だけでも解る。
「序でにこのくらいさせてよね……大空剛腕!」
全身を包む緑色の光に、別の光が合わさる。
ぐいっと引っ張られるように力が上昇したのを感じて振り返ると、疲労の中に笑みを浮かべて頷いてみせるルーがいた。
頷き返して前を見る。先ほどの一撃でよろけたシャロンがこちらを見ていた。睨むように見つめ返して、短く息を吐く。
「“目覚め、そして舞え―――――大海の女帝が命ずる!”」
魔法陣が展開する。響く鐘の音はいつも通りで、何故だかほっとした。
ズキズキと意識を引っ張っていきそうなほどの痛みはルーの魔法が和らげてくれている。詠唱を始めてからの攻撃はルーシィとグレイが防いでくれた。エルザとアルカのおかげで、時間稼ぎを任せたナツが攻撃に巻き込まれる事はない。
皆が信じていてくれている。ティアならシャロンを倒せると信じて、行動してくれている。羽を広げるように伸ばした両腕に集中する魔力にありったけの“全て”を乗せて、吼えた。
「全魔力解放!」
その声に、シャロンは全てを悟ったように目を見開く。瞬間、金色の光が両腕に集中するのをティアは見た。
きっと彼女は自分の勝利を信じて疑っていない。その為ならどこまでだって足掻くだろう。
「滅竜奥義!」
先ほどティアを一瞬にしてボロボロにした一撃に、呼吸が止まりそうになる。湧き上がる恐怖を必死に押さえつけて前を見据えれば、一気に
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