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Element Magic Trinity
その雨が恵みになると信じて
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なら、それはそれで興味もない。
そもそも誰がいようが消えようが、ティアにとっては他人の話なのだ。だから誰がギルドからいなくなろうと、正直どうでもいい。それがそれなりに関わりのあるチームメイトだったり“友達”のジュビアだったりしたら少し興味は湧くが、それだけだ。
だから、その考え通りなら、ティアを助ける理由はない。あれだけ大人数のギルドだ、1人分の欠け程度なら数日あれば埋まる。
なのに、彼等はここまで来た。最後まで迷って結局置いてきたあの手紙から、ティアの辛さや苦しさを読み取って。



「“これは汝の為の言の葉、紡ぎしは言葉、与えるは力、解き放つは光”」



詠唱するティアを、温かい緑色の光が包み込んだ。それに気付いて目を向けると、座り込んだルーが左手をこちらに向けている。
大きな効果を齎す回復魔法を使う程の魔力が残っていないのか、小さい効果のそれを矢継ぎ早に詠唱し、次々にティアの傷を癒していく。一瞬その目が眩むように細まったが、すぐに立て直す。彼とて、もう限界なのだ。
口を動かしつつ首を小さく横に振るが、ルーはそれに気付いていながら回復を続ける。きっと、今のルーには何を言っても無駄だろう。

「星竜の剣牙!」
「うおっ!――――――やべっ、ティア!」

ナツの声にルーから目線を外せば、シャロンの広範囲攻撃がティアに向かって放たれていた。どうやらナツは咄嗟に避けたようで、慌てたようにこちらを見ている。
今ここで攻撃されれば詠唱が中断されてしまう。かといって別の魔法を使えば詠唱中断と見なされる為、使う訳にはいかない。今のティアは完全に無防備なのだ。
駆け出そうとするナツを抑えるようにシャロンが拳を叩き込むのを見ながら、ティアはどうするかと頭に考えを巡らせる―――――が。

「サジタリウス!」
「もしもーし!」
「アイスメイク “(シールド)”!」

突如、ティアの横から無数の矢が飛んだ。更に目の前には氷の盾が造り出される。
突然の事に目を見開くと、ルーシィとグレイがこちらを見てニッと口角を上げた。ナツが「ナイス!」と声を上げるのが聞こえる。
金色の光が全て矢で撃たれ氷の盾に阻まれるのを見つめながらも詠唱は止まらない。言葉代わりにぐっと親指を立てれば、2人も同じように親指を立てた。

「くっ…星竜の――――――」
「2度も同じ事させねえよ!火竜の咆哮!」
「!」

表情を歪めたシャロンの両手に溢れる金色の光を見たナツが、勢いよく炎を放つ。先ほどは突然の事に対応出来なかったが、1度起こってしまえば“なんとなく”でどうにでも出来る。
放たれればナツでも全てをどうにかは出来ない。だったら放つ前に妨害してしまえばいいだけの話だ。



「“この声を刃とし鎖を解こう、最後の鍵は我の中に”」

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