暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
その雨が恵みになると信じて
[4/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ルザだって右腕を斬られていて、ルーシィはそろそろ魔力が限界だろうか。ハッピーはそもそも戦力と数えていないし、ナツだってここまで引き摺ってきてしまったのだから時間稼ぎが限界だろう、と思う。

つまり、全てはティアの一撃に懸かっていると言っても過言ではないのだ。
この一撃を決めて、ここまでの努力を無駄なものにしない。シャロンを倒し、一族の悪事を世間に晒し、ずっと辛い思いをさせてきてしまった兄と弟から重荷を消す。
ただそれだけを考えて、詠唱に集中する。

やけに自分に甘いあの2人の事だから、きっと心配しているだろう。
弟の方は“俺のせいだ”と自分を責めているかもしれない。そんな訳ないのに、と目を伏せる。悪いのは自分だ。何も出来ないで、ただ重荷でいる事しか出来なくて、それでクロスの行動の幅を狭めてしまっている。いつだって姉の事を優先させて、自分のしたい事が出来ないんじゃないかとさえ思う。
兄の方は、きっと書類を投げ出して駆けつけているだろう。普段はバカで、隊長なんて重要な立場にいるとは思えないような奴だけど、兄弟姉妹の事は大事にしてくれている。いつも突っぱねて怒る事しかしていないけど、本当は重荷になっている事を申し訳なく思っているのだ。

きっと2人は優しいから、それを否定する。
「姉さんが重荷…?そんな訳ないだろう。姉さんがいてくれないと、俺は俺でいられなくなる」と数年前に言っていたクロスを思い出す。その時の悲しげな微笑みが脳裏に焼き付いていて、それからティアは弟の前で“私は重荷でしかない”と言う事を止めた。
「お前が重荷だったらオレはその倍の重荷だよ。取り柄ねえし、そもそも愛人の子だしな」と言ってニコニコと笑っていた兄が脳裏を過る。彼とて苦しんでいたのに、いつだって励ます側にしか回らなくて。あの辛さに加えて妹の事を自分のせいだと責めていた。
勝って、2人を自由にしたい。“もう私の事ばかり考えてなくていい”と。




ここまで来るのに、彼等はどれほどの戦いをしたのだろう――――と、ふと思う。
それはただ閉じ込められていただけのティアには想像も出来ない。
私1人程度の事なんだから放っておけばいいのに、と思う。これはカトレーンの問題だ。クロスとクロノが関わってくるのならまだ納得が出来るが、ナツ達が関わる理由なんてない。まあ、そこに理由を見出してしまうのが彼等だという事は、ティアも解っているのだが。



「……“我が魔力を力に、我が魔法陣を扉とし、我が言葉を鍵とする”…」



傷ついてまで助ける価値なんて、自分にはない。
ただギルドから人が1人欠けるだけ―――――もしティアがナツ達のポジションにいたのなら、そう考えただろう。誰がいなくなろうがその人の自由でしかないし、四の五の言って変わるような中途半端な覚悟
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ