第六章
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ちらに」
「入っていいんですか?」
「私が案内させて頂きます」
こう彼に言うのだった。端整な動作と声で。
「ですから。こちらへ」
「わかりました」
とりあえず彼はその言葉に頷いて後についていくだけだった。そのあまりもの見事で豪奢な店の外装とウェイターの気品のある動作に何も言えなかったのだ。何はともあれ彼は店の中に入った。するとその店の中がこれまた彼にとっては驚くべきものだった。
「なっ・・・・・・」
外観もそうだったが内装もこれまた宮殿の様であった。大理石の床にビロードの絨毯が生えている。柱は磨かれまるで鏡だ。階段もみらびやかなものでこちらも宮殿のもののようだった。そこの広間にある様々なテーブルを見ながら彼はウェイターに案内されていく。そうしてそこで案内された席は。
「羽田様」
彼はある席の前で立ち止まりそこにいる貴婦人の如き女性に声をかけた。するとそこにいたのは圭だった。髪を上で纏め紅いドレスを着ている。
「お連れの方が来られました」
「有り難うございます」
圭はウェイターに顔を向けて静かに一礼してきた。
「それでは野上様。こちらへ」
「あっ、はい」
剣人はここでもこのウェイターの言われるがままだった。引いてもらった椅子に座る。それは圭と正面から向かい合う席だった。そこに今座ったのである。
席に座った彼に対して。圭は静かに口を開き言ってきたのだった。
「それでね」
「何ですか?」
「このレストランどうかしら」
まずはレストランについて尋ねてきたのだった。
「気に入ってもらえたかしら」
「気に入ったっていうか」
まだ唖然としている。そしてそれを隠すこともできなくなっていた。その声で言うのだった。
「こんなお店本当にあったんですか」
「フレンチの三つ星のお店よ」
「フレンチの三つ星!?」
「それはわかるわよね」
剣人に目を向けて問うてきての言葉である。
「フレンチは」
「フランス料理のことですよね」
「ええ、そうよ」
「それはわかります」
実は庶民暮らしで高校生の時に街を歩いていて声をかけられたのが彼のデビューである。外で食べるといえば食堂や中華料理店、後は回転寿司といったものでありこうした店に入るのは生まれてはじめてでもあるのだ。これは態度にもう出てはしまっていた。
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