【大きくなったアンナの話】
「サルヒコ」
聞き覚えのある声で名前を呼ばれ、伏見は足を止めて振り返る。
伏見の後ろには小さな赤いドレスを着た少女が立っている、はずだった。
「…………」
無言。
伏見は無言で小さいはずの少女を凝視している。
確かに容姿は小さいはずの少女そのままなのだが、伏見は凝視を変えることは出来ない。
小さいはずの少女、アンナは今目の前に居て、伏見とさほど変わらない高さになっている。
「サルヒコ無視しないで」
声の高さと喋り方がアンナと全く同じなので、今目の前に居る人物はアンナ本人だと分かってはいるが疑問にしか思わない。
伏見はアンナの声をよく知っていて、喋り方も知っているので間違う事はない、が、何故アンナが大きくなったのか理解が出来ないでいる。
成長したとうわけでもなく、短期間で、小学生から高校生になったような異常だった。
「なぁ、お前本当にアンナだよな?」
伏見にとっては見知らぬ他人の方がまだ救われたのかもしれない。
伏見の問いにアンナは首を縦に振った。
「私の名前は櫛名アンナ」
「聞かなくても分かるから」
礼儀正しく自己紹介をするアンナだが、顔見知りなのであまり意味が無いようにも思える。
伏見はストレイン関係かと思いアンナに直接尋ねてみる。
「ストレインか何かの仕業か?」
アンナは首を横に振り、ある人物の名前を口にした。
「ムナカタレイシって人から貰った飲み物飲んだら大きくなった」
宗像礼司、東京法務局戸籍科第四分室の室長を勤めている青の王様の顔を伏見は思い出す。
通称セプター4と呼ばれているそれは主にストレインの捕獲などを担当している。
まず何故宗像が敵対しているチーム吠舞羅に飲み物を持って行ったのかが気になるところを、伏見は無視をしてアンナの大きさに驚く。
「っで、この大きさか……」
「サルヒコ私今日から高校生!」
目を輝かせて言うアンナに対し、伏見は内心どうでもいいと思いながら適当に返事をした。
その返事に突っ込まれるのは数秒後。
「今どうでも良いって思った」
「思ってねぇよ」
「思った」
「思って……」
「思った」
アンナは遠慮がちなところもあるが、根は頑固なので伏見がどうでも良いと「思った」というのを否定することはない。
何度伏見が「思ってない」と返そうがアンナからは「思った」の一点張りだ。
伏見は諦めたのか溜息をつきながらアンナの目の前で吠舞羅の徴を掻きながら尋ねる。
「……何でウチの室長から飲み物を貰ったんだ?」
伏見の問いにアンナは表情を全く変えずに答えた。
「街で会った時にくれた」
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