温泉旅行(前編)
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うのが意外だ。
普通なら電話してくるだろうと思っていると信号が赤になったので立ち止まる。
急いでいたからなのか、街の景色を見てみると朝早くに外に出ないため、人の気配がしないことに気付く。
そりゃぁまだ7時にもなっていないので、学生も居ないだろうと思っていると信号が青になったので再び歩き出す。
気持ちは急いでる。
やっと中央駅に来れば、20歳ぐらいの男性や、高校生ぐらいの女の子2人、駅員にさっきとは違って人がたくさん居た。
やはり駅は人が多い。
そんな事を思っていると、自動切符売り場で見慣れた金髪が目に入り一瞬躊躇したがゆっくりと金髪の男の所まで歩いていく。
そして――「りと」と声をかける。
**
「……っで、遅刻した理由は?」
不機嫌だ、表情が不機嫌だと言っている。
確かに言われた時間より約1時間も遅れているのに上機嫌な訳がない。
りとの服装はいつもとあまり変わりがなく黒のスラックスに長袖の白シャツ、赤いカーディガンを腰に巻いていた。
何か異様を放っていると思っていたらピアスが無いことに気が付いて、異様の正体がすぐにわかった。
異様というより何故か修学旅行で使われるボストンバックを肩に掛けていた。
それ以外は変わったところはない。
「聞いてんのか?」
りとが睨みつけながら俺に尋ねる。
不機嫌なので変に言い訳をしない方が身の為なのは分かるが、正直に寝坊したなんて返答もしたいとは思わない。
寝坊したなんて言ったら多分、ホームから突き落とされるだろう。
それぐらい凶暴な奴だ、俺の兄は。
「えっと、ごめん」
遅刻した理由には答えずに謝罪だけすれば不服だったのだろう。
舌打ちをすれば「理由を答えろ」と言い返された。
寝坊した、と言えば死刑宣言なのでどうやって誤魔化そうかと考えている間にりとは居なくなっていた。
帰ったなと思い俺もそのまま帰ろうと出口の方に向けば、目の前に切符が出された。
行き先は結構遠いところなんだと値段を見れば何となく想像がつく。
「電車で行くからな」
どこに行くか知らされていないけれど、遅刻した罰として知らされないと言うように受け取った。
切符を受け取るとりとは特急列車の方に向かったので後についていけば、丁度電車に乗って数分で電車が発車した。
特急列車だけは不思議と新幹線に座席が似ている。
新幹線、といっても新幹線の座席をひっくり返して、前向きと後ろ向きになった状態だ。
つまり何が言いたいのかと言うと目の前には見知らぬ他人が居る。
別に居る事が悪いという訳ではないが、俺としては目の前に見知らぬ老夫妻の心配をしてしまう。
何も無ければ良いのにと思ったのも束の間、老夫妻はりとに話しかけた。
不機嫌なりとに話しかけるという事
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