≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
≪外伝≫ かなわないけれど
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早かれ全員死ぬんだ。こんなことに、闘うことに意味がないんだ。そう思っていた。
でも、彼は――スバルは違う。
隣にいる長身の少年、スバルは途轍もなく、強い。レべルや技術の話じゃなく、その精神が果てしなく強い。
彼の言う≪情熱≫は、何よりも重く決定的で絶対的な存在として彼の魂に深々と刻み込まれている。その魂は天秤を大きく傾けさせて、しかも正解へと一直線に導く圧倒的な重量なんだろう。湾曲し捻じ曲がった不平等な天秤は常に≪情熱≫向かって頭を垂れていて、しかしそれでもその≪重さ≫は決して間違っていないのだろう。
良し悪しを量ろうとする私達とは根本的に違う。量らずに計らずに謀らずに、天秤そのものを無理矢理に歪めさせ、間違い続けてもただひたすら盲信し猛進し、一心に情熱を積み上げて重くしてきた。その単純な作業のために途方もない努力と時間を浪費したことだろう。
敵わない。そう思う。でも、強く憧れる。
敵わなくとも、せめてスバルの近くで一緒に闘いたい。きっと私は最後までは生き残れない。ディアベルと同じように私は死ぬんだろうということは今でも強く思っている。
それでも、私は闘いたい。闘って闘って、闘い抜きたい。勝ち逃げなんかしたくない。突き進む彼の隣で、私は強くなり続けたい。彼のように強くなりたい。
叶わないことかもしれないけれど、途中で終わってしまうかもしれないけれど。
私はスバルに魅入られたのだから。
「アイ、あとどんぐらい?」
ふと隣で、スバルの声がした。
さっきつけられた渾名≪アイ≫――それは奇遇にも私の本名だった。私の現実での名前――浅岸藍。今ではアイという響きが遠く懐かしい。どうしてこの渾名を許したのだろう。郷愁に駆られてなのだろうか、はたまたもっと別の感情なのだろうか。……いや、こんな事、考えても仕方がない。
「そうね、……もう少しのはずだわ。あと松明を十数個ぐらい?」
「へぇー、案外短いんだねぇ」
コツコツと階段を登る、重なることのないバラバラの二つの足音が響いている。しばらくの間それだけを鳴らして歩いていると奥の方から一層強い光が漏れてきた。
僅かに開いた第二層の扉は、肺によく通る新鮮な空気と温かい光を漏らしていた。両手でその扉を押し開けると、穏やかな陽光が目に飛び込み、次に土の匂いが鼻に入ってきて、そしてほのぼのとした家畜の声が耳に響いた。
フロアボスの出口は断崖絶壁の中腹に設けられていて、扉を開ければ広大な第二層を一望できる。マップを横断するような巨大な山脈とそこかしこに点在する野生の牛達がマッチして景色を映えさせている。
「いい景色だ。冒険したくなるぜ」
一歩前に出たスバルが掌
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