暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
≪外伝≫ かなわないけれど
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 螺旋階段の向こうから漏れる松明の光を見て、ふと私は思い浮かぶ。昔の友達が私に対して持ち掛けた、あの夢物語を。






「オレは、どうしても、どうしてもベータテスターと新規プレイヤーとの関係を何とかしたい」

 私が宿泊している民家の一室で、ソファに座りながら神妙な面持ちでディアベルは言った。私はソロプレイ主体の野良として最前線で攻略しているプレイヤーで、彼はパーティーリーダーとして五人の仲間と供に戦うプレイヤー。この対照的なスタイルの二人が同じ一室にして密会しているのは、複雑怪奇な男女間の関係ではなく、ただの元ベータテスター同士というだけだった。

「聞いてるか? インディゴ?」
「ええ、聞いてるわよ。無視しようか悩んでいただけ」

 ディアベルがムッとしたような表情でこちらに目を遣る。最初の話題に応えるように言葉を選んでいると段々、無視した方が良かったと思い始める。それでも反応してしまった以上、返さなければならないだろう。

「気持ちはわかるけど……叶わないんじゃないかしら? 結局不平を言っている人達は平等の旗印を頼りに利益を強奪したいだけ。何を言っても、何を提供しても、彼らは聞く耳持たずに腕だけ伸ばして何もかもを剥ぎ取るはずだわ。……あのスカベンジャーどもは」

 パーティーを組んだ時、ベーターに対する愚痴ばかりを言うプレイヤーと出会ったことがある。あの支離滅裂で独善的な理論には吐き気すら覚えたものだ。結局、彼らは苛立ちを近くの何かにぶつけたいだけだろう。

 この閉鎖的で限定的世界ではモラルの低下が当然のように起こっている。

 ティーポットからコップへと味の薄い紅茶を注ぎディアベルと私の椅子の前に一つずつ置く。こんな薄味でも第一層では数少ない嗜好品で、しかも高級品。現実世界でなら安物のインスタント程度の味でしかないのに不思議で仕方ない。

 私の愚痴とも言える言葉にディアベルは苦笑いを浮かべながらコップを受け取り言葉を返す。

「そう非難するなよ。皆いきなりのことで苛立っているんだ。ちゃんとゲーム攻略の目途(めど)が立てば絶対に今回のような事件は解決する」

 いつになく真剣な様相で言うディアベルに、私は奇妙な尊敬を抱いた。本気なんだろう、と思う。彼には私にない人を引っ張る能力がある。しかもその能力に彼は自覚的だから所在の知れない責任感を感じているのだろう。責任感だけなら私も少ないながら感じてはいるが、だからといって何とかしようとは思わなかった。

 どうしようもないことだと諦めていた。時間が解決するのを待っていた。

 だけど私は何も他人任せにしていたわけじゃない。

「自信ありそうじゃない? それで、具体的な話は?」

 小さく笑い、自分の席に座る。置いてある紅茶を手に
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