第四章
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第四章
「いいね、それでね」
「ええ。それじゃあ」
「今の剣ちゃん全体として評判いいから」
そしてさりげなくこうしたことも告げるのだった。
「この調子で頑張ってね」
「わかりました」
「中盤に入ってるけれどね」
これは撮影の収録が、という意味であった。
「馴れてはきているだろうけれどだからこそ余計に気を引き締めてね」
「そうですね。それは」
「このドラマ視聴率もいいんだよ」
好評だということである。少なくともそう考えていい話ではあった。
「剣ちゃんと羽田さんの演技がいいってね。ああした書き込みはあるけれど」
「羽田さんもですか!?」
剣人は彼女の名前が出るとすぐに明るい声を出した。
「そうなんですか」
「あっ、うん」
マネージャーは彼の言葉が勢いを得たのを見て少し引いた。しかし引いただけで自分が失言をしたとは思っていなかったし気付いてもいなかった。迂闊ではあった。
「そうだよ。主演二人がいいってね」
「そうですよね。やっぱり」
彼は今の言葉には自分も含まれていたがそのことは見ずにまた言うのだった。
「凄いですよね」
「剣ちゃん才能あるよ」
マネージャーはさらに彼を乗せるが彼は今はそれを聞いてはいなかった。ここにズレがあったが残念なことにお互い気付いてはいないのだった。
「だからね。このままね」
「頑張って欲しいですね」
「うん、頑張ってね」
お互いの言葉に気付かないままだった。しかし剣人の気持ちはさらに強いものになっていった。それは撮影が進むにつれさらにであり遂には。彼は撮影の合間の休憩時間に圭に対して声をかけたのだった。
「あの」
「何?」
「ちょっといいですか?」
こう彼女に声をかけたのだった。
「ちょっと」
「ちょっとって」
「もうすぐお昼ですから」
照れ臭そうに。言葉を慎重に選びながら彼女に対して言うのだった。
「それでですね。よかったら」
「ええ」
圭は彼に顔を向けている。しかしすぐにその場を去りたそうなのがわかる顔であった。
「お昼。御一緒になんて」
「お昼って」
「どうですか?」
彼女に対して問うてきた。
「宜しければですけれど。皆さんと御一緒に」
「皆さんと」
「はい。どうでしょうか」
また圭に対して問うのであった。
「御一緒に。お食事でも」
「お昼に・・・・・・」
「駄目ですか?」
おずおずと圭に対して問い続ける。
「それは。よかったら」
「ちょっと」
圭は俯いて彼の問いに応えてきた。
「悪いけれど」
「そうですか」
「ええ。私の昼食はもうマネージャーが用意してくれてあるから」
こう言って自分の車に顔を向ける。黒い乗用車だ。彼女はいつも休憩の時にはそこに閉じ篭もるのだ。そうして誰とも会お
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